今さら『女王の法医学 ~屍活師~2』感想

2022年3月21日20:00からテレビ東京系で放送されたドラマ『女王の法医学 ~屍活師~2』の、今さらながらの短め感想です。

事件は、埼玉県警の村上(田辺誠一)が追っていた不審な男・大塚が、「やめろ!助けてくれ!」と叫んで屋上から転落し死亡、現場には大塚の他に村上しかいなかったことから、村上に疑いがかかるところからスタート。
法医学准教授・桐山ユキ(仲間由紀恵)が解剖したところ、大塚のコカイン摂取が判明、幻覚症状による妄想によって飛び降りた可能性が大きく、大塚が来ていたジャンバーから村上の指紋が発見されなかったということもあり、早々に村上の疑いは晴れ、謹慎を解かれます。
この後、ユキと村上はラウンジでコーヒーを飲むのですが、あいかわらずユキは砂糖を山ほど入れます。「コーヒーだけじゃ礼には足りないか」と言ってちょっと距離を置いて隣のテーブルにつき ネクタイをゆるめる村上に、「何かホッとした顔してんね。実はビビってた?」とユキ。「バカ言うな」「強がりは昔っから変わんないね」「アンタは変わったな。脳外科にいたころから愛想はなかったが、もっと笑ってた」「今の私が笑ってたら、アンタはムカつくんでしょ‥法医学はいいよね、遺体が相手だから死なせる心配はないし」「‥確かにな」
欲深ですが、ユキと村上の こういうちょっとトゲのある応酬が好きな私としては、この時の二人の空気感をもうちょっと長く味わわせてもらいたかったなぁ、と思いました。

さておき。大塚の転落死は、この後のさらなる事件の序章となります。
大塚が持っていたバッグの中の宝飾品が瓜生公造(山田明郷)という男性のものであることがわかり、警察が瓜生の自宅に行くと、瓜生とその妻・節子(手塚理美)が殺されていたのです。
大塚が犯人かと思われましたが、彼は頸椎ヘルニアの後遺症で握力が弱いうえに、腕を振り上げることが出来ないので、二人を殺すのは不可能。

ユキは瓜生夫妻を解剖、死亡時間をずらすトリックに気づきます。
そのトリックを仕組んだのは、節子の息子・仁史(高木雄也)。犯行の動機は、公造の遺産を狙ったため。
20億の資産を持つ公造が節子と同時に死んだ場合は、全額が実子の淳(袴田吉彦)に、公造が死んだ時に節子が生きていた場合は、遺産の半分は淳に、半分が節子に渡る。しかし、節子が死んでいるので、その遺産は節子の子である仁史が相続することになる——­このあたりちょっとややこしいのですが、仁史は公造の養子ではない、というところがミソ。
しかし、仁史は私欲のためにそうしたのではなく、「遺産を全部寄付すれば、かあさんは注目されて感謝もされる、かあさんが生きてきた証を残したかった」と。
それを聞いたユキは「変な承認欲求。くだらない。お母さんは感謝されたいって言ったの?勝手に死んだ人の気持ちを決めつけたわけだ、一番母親を理解しているはずのあなたが」とバッサリ。
父親のリハビリで仁史の世話になり、本当の兄のように慕っていた実習生・ワンコこと犬飼一(松村北斗)の「お母さんは本当に不幸だったのかな」の言葉で、身体が弱かった自分のために節子が自分を犠牲にして瓜生の妻になった、母はずっと不幸だった、と思い込んでいた仁史が、節子との日々を思い出し、そうではなかったと気づいていく‥
そんな仁史への、「死んだからってその人が消えるわけじゃない、私たちが遺体の声を聞けるように、生きてるアンタの思いもきっとお母さんに届く」というユキの言葉は、ちょっとほっこりしたところかな。
その言葉をきっかけに、実はワンコの父親の手術をしてくれたのがユキだったことも判明、「みんなの思いがお父さんに届いたね」と言った後のユキのやわらかくて美しい笑顔がものすごく印象的でした。
(‥そうかぁ、脳外科医だった頃はあんなふうに笑ってたんだ‥村上もきっとユキのあの笑顔が好きだったんだろうなぁ‥弟のことがあってその笑顔が見られなくなって寂しい気持ちもあるのかもしれないなぁ‥なんて、勝手に妄想してしまいました)

たった数時間の死亡時刻の違いで遺産を相続する者が変わるというのは、なるほどと思わせるものでしたが、大塚が家を荒らしたところに、ちょうど瓜生の秘書・三島(筧美和子)がやって来て二人を殺し、その後に仁史が来た、というのは、ちょっと出来過ぎかなと。
ただ、もっとも怪しい人間と見られた瓜生淳(袴田吉彦)が見せかけに過ぎず、次から次へと容疑者が浮かび、宝飾品を盗んだ人間、二人を殺した人間、死体に細工をした人間が、別々にそれぞれの思惑で動き、それがひとつの事件として構成されて行くのは、なかなか面白かったです。

今回は、ワンコが随分と頼もしくなって、ユキとバディと言われても違和感なくなっていてびっくり。
「先生は亡くなった人のことばかり考えて、生きている人から逃げているように見えます」なんて、ユキの痛いところを突いてくるようになったりして。
節子の遺体の前で「真実で遺族が浮かばれないこともある」と言うワンコに、ユキが「ありのままを見なさい、遺体のありのままを。アンタの思い入れはこの人の真実と関係ない。真実はこの人の体の中にしかない」と諭すシーンでは、ワンコの成長も見られて良かったし。

でも、その分、村上とユキの関係がちょっと弱まったかな。コーヒーを飲むシーン以外は、二人の立ち位置が前回ほど明確ではなかった気がします。相容れない気持ちがありながらも仕事の腕は認め合っている、という、微妙なニュアンスが少し薄まってしまったようで、村上好きとしてはそこがちょっと残念ではありました。

ユキのあいかわらず陰影のある雰囲気がとてもいいです。味が分からない、変なお菓子に手を出す、でもなぜ味が分からないのか‥というのは、すでに放送済みの「3」で明らかになったのでしょうか。観るのが楽しみです。

『女王の法医学 ~屍活師~2』
放送:2022年3月21日20:00-21:54 テレビ東京
原作:杜野亜希「屍活師」 監督:村上牧人 脚本:香坂隆史
チーフプロデューサー:中川順平(テレビ東京
プロデューサー:黒沢淳(テレパック)、雫石瑞穂(テレパック)、山本梨恵(テレパック
制作:テレパック 製作:テレビ東京 BSテレ東 テレパック
出演:仲間由紀恵 松村北斗SixTONES
高木雄也Hey! Say! JUMP手塚理美 袴田吉彦 筧美和子 山田明郷
新実芹菜 小松利昌 石坂浩二 田辺誠一 他