『家族ノカタチ』感想

『家族ノカタチ』感想 

人と深く関わることで自分のペースを乱されるのが嫌、
自分の好きなものに囲まれて この先もずっと一人で生きて行く、
と考えている39歳の大介(香取慎吾)が、
父親(西田敏行)や 階下の住人(上野樹里風吹ジュン)、
会社の同僚(荒川良々千葉雄大)、
自分との結婚を望む女の子(水原希子)、
父親が連れて来た義理の息子(高田彪我)・その母(水野美紀
といった人たちと深く関わらざるをえなくなり、
自分のテリトリーを否応(いやおう)なく崩されて行くことによって、
少しずつ大切な何かを見つけ出すようになる、というお話。

人間関係が希薄になりつつある今、タイムリーな内容でもあり、
考えさせられることも多くて、面白かったです。
とにかく、セリフ(脚本・後藤法子)が抜群にうまいんですよね。
ライトなコメディという外見の中にしっかりと伝えるべきことを持っていて、
軽いタッチの言葉の中身に重みがあって、
毎回うんうんうんとうなづきながら観ていました。

まず、香取くんが嵌(はま)ってました。
大介は、クール‥と言うより、万事に 醒(さ)めた男という感じなんだけど、
その空気感はちゃんと残しつつも、
彼がまとっている殻(カラ)が徐々に壊されて行く様子が
きっちりと伝わって来た、
それは、香取くんが作る一瞬の間(ま)だとか微妙な表情とかが
とても自然だったからだと思います。

お相手の葉菜子は上野樹里さん。
いかにも女の子 って感じじゃなく どこかサバサバしてる、
だけど内面にナイーブなものを持っている、
おそらくそのあたりは上野さんの持ち味なんだろうと思うのですが、
それが役にとてもフィットしていて、観ていて心地良かったです。

主人公二人も とても良かったのですが、
周囲の人たちも魅力的でした。
大介の生活に土足で踏み込んで来て荒らしまくる迷惑千万な父親は、
誇張され過ぎてマンガチックになってしまったところもあるけれど、
西田さんのキャラだから許されていたような気がします。

その陽三(西田)の再婚相手・恵は水野美紀さん、
その連れ子・浩太に高田彪我くん。
この親子のサイドストーリーが 私にはすごく響くものがありました。
「おかしいと思わねえか。
恵ちゃんには兄弟も親戚もいる。
なのになんで恵ちゃん一人だけで生きて来なけりゃなんないんだよ。
誰かちょっと力を貸してやれりゃ、
恵ちゃんも浩太ももう少し楽に生きて来れたんだ」
という陽三のセリフには、
このドラマの最も大切な芯の部分が語られていたような気がします。

荒川さんとか千葉くんとか、大介の同僚も、
ちゃんとそれぞれの生活や生き方みたいなものが見えて、
いいキャラだったなぁ。

葉菜子の後輩で、いかにも女の子〜って感じの莉奈に水原希子さん。
まったく空気読めなくて、時に暴走したりもするけど、
ちょっとあざといほどの可愛らしさの陰から、
どんどん魅力的なところが見えて来て、
最後には「素敵な女性になって良かったなぁ」と思えた。

そしてもう一人、莉奈と同じくらい・・いやそれ以上に
いい役だなぁ、好きだなぁ、と思うようになったのが、葉菜子の元夫・和弥。
お互い嫌いになって別れたんじゃない、
葉菜子とよりを戻すということも十分にありうる、という立場で、
一種の当て馬的存在ではあるんだけど、
この人は本当に葉菜子のことを心配している、
自分の気持ちより先に 葉菜子の気持ちを尊重しようとする、
葉菜子を励まし、何とか前へ進ませようとする、
それが彼なりの愛情表現になっている、
アタックして振られてさようなら、といった、単純な当て馬になってない、
というところが、すごく良かった。
田中圭くんが演じてるからなおさら和弥の良さが伝わった気がします。

最後には大介と葉菜子が結婚するんだろう、というのは、
初回から簡単に見通せる。
にもかかわらず、単純でありきたりなラブコメディになっていないのは、
そこに至るまでの二人の心の動きを丁寧に描き、
かつ、彼らの周囲にいる人々の人間性や成長をきめ細やかに描いた、
その賜物であったような気がしました。
良い脚本の上にキャストがうまく嵌ったドラマは、やはり面白いです。


『家族ノカタチ』     
放送日時:2016年1月17日 - 毎週日曜 21:00 - (TBS系)
脚本:後藤法子 演出:平野俊一 酒井聖博 松田礼人 音楽:大間々昂 兼松衆
音楽プロデューサー:志田博英 編成・プロデューサー:韓哲(TBSテレビ)
プロデューサー:佐藤敦司(ドリマックス・テレビジョン
製作:ドリマックス・テレビジョン TBS 
キャスト:香取慎吾 上野樹里 水原希子 荒川良々 千葉雄大 柳原可奈子
高田彪我 観月ありさ(友情出演) 田中 圭 浅茅陽子 森本レオ
水野美紀 風吹ジュン 西田敏行 他
公式サイト