『ネオ・ウルトラQ』(第5話)感想

ネオ・ウルトラQ(第5話/言葉のない街)感想

鰐渕晴子さんの出演は嬉しかったな。
彼女は、浅丘ルリ子さんあたりにも通じるような、
実際のリアリティとは違う、その作品の中でしか通じないリアリティ
を生み出せる女優さん、という気がします。
こういう、ちょっと不思議な空気感の作品にはぴったり。


言葉のない街は、
何となく、海の底のような異世界を覗いているような感じでした。
淡々と静かにゆるやかに穏やかに生息するエピゴノイド。
その世界に入り込んで行く、南風原田辺誠一)、絵美子(高梨臨)、
そして正平(尾上寛之)・・
この3人に、いたずらに事を荒立てない品性と優しさ、
また、エピゴノイドに対する同調性のようなものが備わっていて、
刺々しさや激しさがなく、安心して観ることが出来ました。
(完全にエピゴノイド的視点で観てるワタシw)


今回は、中でも特に正平が良かった。
理解している人間である南風原
理解しようとしている人間である絵美子、に対して、
理解は出来なくても、いつも自然とすべてを受け入れている正平が、
エピゴノイドに対しても、素直な眼差しを送ってくれていたように思えて。


相手の感情を言葉なしで完璧に理解出来るエピゴノイド。
しかし、彼らは、相手を本当に愛することが出来なかった。
「相手の気持ちが分からないからこそ、相手を愛することが出来る」
・・この、逆説的な発想が、今回も興味深かったです。
これもまた、先週同様、「向こう側からの視線」という感じ。


ここまでネオウルトラQに出て来た怪獣や生物たちは、
建物を破壊したり人を傷つけることはほとんどなく、
直接、人間の心に入り込んで来ようとしているように思われます。
善い人間が悪い怪獣をやっつける、なんていう
単純で爽快なお話ではないし、アクティブなシーンがほとんどないので、
面白くなく感じる人もいるかもしれないけれど、
これはちょっと、そういう先入観を一旦はずした方がいいのかもしれない。
ここまで観て来た私の印象としては、
やはりこれは、「ウルトラシリーズ」ではなく、
世にも奇妙な物語」の流れと考えた方がしっくり来るような気がするので。


いやいや、ひょっとしたらこれらは、
想像以上に繊細なドラマ群なのかもしれない。
これからどんな作品が観られるかは分からないので、
間違った捉え方になるかもしれませんが、
もしかしたら、ひとつひとつの作品としてはもちろん、
ネオ・ウルトラQ』全体を、ひとつの大きな作品としても
捉えることが出来るのではないか・・という気がし始めています。


監督:中井庸友 脚本:いながききよたか
出演:田辺誠一南風原仁) 高梨臨(渡良瀬絵美子) 尾上寛之(白山正平)
/鰐淵晴子(美鈴)  太田莉菜(メリ) 尚玄(ハシオ)

『ネオウルトラQ』公式サイト