『蒼い描点』感想

『蒼い描点』感想
フジTV金曜エンタテイメント『蒼い描点』を観ました。
いや〜〜なかなか楽しかったです。
「これぞまさに2時間サスペンス!」という感じ。(笑)
そうなのよね、これはきっちりと「枠にはまった」ドラマ。
2時間サスペンスはこうでなくちゃ、という「型を踏んだ」ドラマ。
水戸黄門』や『名探偵コナン』みたいに
その型を楽しみ、酔うことが出来ないと、
とたんに、くだらない・面白くない、と感じてしまうかも。


肝心なのは、「犯人は誰か」ということ。
複雑な枝葉をつけちゃ、2時間サスペンスには収まらない。
さぞ格調高いであろう松本清張氏の原作から エッセンスだけを頂戴して、
視聴者を軽〜く攪乱(かくらん)しつつ、ヒロインの不安に軽〜く同調させつつ、
犯人は誰か、を、推理させる。
しかも、犯人は、あまり簡単に解かってしまってはいけない。
ちょっとした推理マニアが「なるほど〜」と思う程度に、
少しだけ複雑でなければ。
その辺、小日向文世さんが終盤のポイントとして上手く使われていましたし
BGMがすごく効果的だった気がします。
(実際、このドラマ最大の功労賞を与えたいとさえ思う。笑)


ただ、2時間サスペンスがよく陥る弱点でもあるのだけれど、
「犯人は誰か」というところで視聴者を惹き付けるのに手一杯で、
「なぜ殺したのか」という動機になると、途端に貧弱になってしまう。
犯人と探偵が対峙した時に、犯人の口から語られる「理由」が、
もっともっと深くて、共感出来るものになっていたら、
言葉だけでなく、映像として、もっとインパクトがあったなら、
2時間サスペンスとして、かなり出来の良いものになっていたのではないか
と、ちょっと残念でした。


田辺誠一さん。
うん、とりあえず、画面からはみ出してなくて良かった。(笑)
週刊誌の編集者。
スタイリッシュじゃなくて、どっか垢抜けてなくて、
かっこいいと言い切れなくて、
でも、熱くて、何にでも興味を持って、一所懸命で、
しかも、ガッと前に出ようとはしないで、
ちょっとは人の痛みもわかってて。
何より、あの瞳から発する強い視線がいいですね。
きっちりと相手を見て、きっちりと何かを受け取ろうとする‥
これは結構「探偵役」もいけるかも、なんてことを考えました。(笑)
あの髪型からすると、やはり金田一耕助あたりがいいかな。 
いつかやって欲しいなぁ。


ともあれ、この「2時間ドラマにすっぽりと収まる感じ」というのは、
私としては、以前はまったく考えられなかったものなので、
なかなか興味深かったです。
他の俳優さんだと、
ダサくても、どこかにかっこ良さみたいなものが残るんだけど、
田辺さんの場合は、ちゃんとダサくなるんですよね〜(笑)
あとは「素」の勝負、みたいになるので、
そこから、あの崎野のキャラを作って行った、
作った崎野がちゃんと魅力的に見えた、というのは、
かなかに興味深く思えました。
(あいかわらず偉そうな言い方ですみません。笑)


―――ああ、なんか、我ながら突き放した書き方をしている。(笑)
同じ2時間でも、もっとずっと内容が濃く、もっとずっと深い感銘を
受けるドラマがたくさんあるわけで。
「型にはまったドラマ」「安心して予定調和に浸れるドラマ」も
よいけれど、
個人的には、もっともっと攻撃的に視聴者にぶつかって欲しい、
そういう挑戦的なドラマが増えて欲しい、とも思います。

『蒼い‥』の翌日に放映された『死亡推定時刻』はどうだったんだろうか。