『サボテン・ジャーニー』感想:4

旅は道連れの3人の会話の中から、
いろんな過去が浮かんで来たナビオくん(田辺)ですが、
私が一番印象に残ったのが「絶対音感の持ち主」。
しかも、だからと言って、本人はけっして歌が上手いわけではなく。(笑)
絶対音感の持ち主が音痴(あ、失礼)ってことがあるんだろうか?」と、
ちょっと「?」だったりしたんですが。

でも、もし、本当にそういう人がいたとしたら、結構ヒサンなんじゃないか、と。
だって、自分が今歌ってる歌の音程がはずれてる、って、
一番確実に、細部まで正確に、感じ取れてしまうわけじゃないですか。

そうしたら、だんだん歌うのが嫌いになっちゃったりしないのかな、と。

ピアニストを目指し「絶対音感が ぜ~~ったい音感になってしまった」観音崎実くんが、
音楽が大好き→音程をはずした歌は許せない→自分が歌うことを封印
という、哀しいトラウマを抱えてたとしたら・・・

旅の途中で、3人で「長崎は今日も雨だった」を歌って、
肩の力を抜いて音楽を楽しむことを思い出しつつあったナビオ。

綾(小林聡美)の実家のお風呂で、思わず口ずさんだ「長崎・・」に、
綾のお母さん(由紀さおり)がハモってくれた時、
彼はきっと、音楽の楽しさ、みたいなものを、
絶対音感を持ったピアニスト、というのとは違った形で、
心から享受出来たんじゃないか、と。
音痴な絶対音感の持ち主、という自分を、初めて許せたんじゃないか、と。

家を出る時、
ナビオが振り返って、改めて、綾のお母さんに頭を下げる。
あそこに流れていた温かい空気は、ただ、「泊めてくれてありがとう」というだけでない、
ナビオが、自分を解き放ってくれたお母さんに心から感謝し、
お母さんもまた、そういうナビオをほんわりと受け止めてくれてたから、
だったんじゃないか、と。

船の上で、大声で気持ち良く「長崎は今日も雨だった」を歌うナビオは、
あの時きっと、歌うことを目一杯楽しんでたんだろうなぁ・・・