福島で放射線を浴びつつ考えたこと。

私が住んでいるところは、福島県中通り地方中部ですが、放射線量に関しては会津若松市とほぼ同程度、周辺地域の中ではあまり高くない場所です。そのことも考慮して読んでいただけるとありがたいです。
福島で放射線を浴びつつ考えたこと。
長い間書き込みせず、申し訳ありません。
ここは、いつもTVドラマや映画の感想を気ままに書いている場所なので、
以下のようなことを書くのは、いささか ためらいもあるのですが、
やはり、どうしても、震災以後考え続けて来たことを
自分なりに形にして表に出さないと前へ進めない気がするので、
書かせていただきます。
(あくまで私個人の「しろうと考え」なので、
こんなふうに考えてる人もいるんだなぁ・・という気持ちで
読んでいただければ幸いです)


私は、福島県中通り地方に住んでいます。
福島第一原子力発電所から、西に50キロあまりのところです。
仕事をしたり、学校に行ったり、買い物をしたり、と、
皆、ごく普通の生活を送っていますが、
毎日、普段の6〜10倍の放射線を浴びていますし、
放射性物質が 微量ながら地上に積もっている状態なので、
それらを身のまわりから一切排除して生活する、ということは、
現実問題として出来なくなっています。


放射能は怖い、という先入観は、誰にでもあると思います。
福島県の避難区域以外の地域は、
普通に生活するのに支障はない、と言われていますが、
「ほとんど影響ない」とか「ただちに健康に害はない」とか、
どこか曖昧な表現があると、つい疑ってかかりたくもなります。


けれど、逆に考えてみて、
この世の中に、絶対に安心安全である、と言い切れるものが、
いったいどれだけあるのでしょうか。
生まれてから死ぬまでの間、絶対に安全な場所にいて、
絶対に安心な食べ物だけを食べて、生き続けて行ける人が、
この世の中にどれだけいるのでしょうか。
交通事故に遭うかもしれないからといって、
一生家から外に出ない、というわけにはいかない。
いや、一生家の中にいてさえ、
暴走車が突っ込んで来る、なんてことが、絶対にありえない、
とは言えないのです。


ならば、少しの勇気を持って、一歩外に出てみよう。
もちろん、しっかり基本を学んで、きちんと注意を払った上で、
何が正しいのかを自分自身で判断しながら。


普通の生活をしていてさえ、
私たちは、さまざま病気にも事故にも天災にも出遭ってしまうのだから、
放射線だけを ことさらに特別視して、
いたずらに恐怖感を募らせ過ぎる必要はないのではないか、と。


福島県放射線健康リスク管理アドバイザーである
長崎大学の山下俊一教授は、
放射線が原因で病気になるリスクよりも、
放射線を過度に恐れてストレスを抱えることの方が、
はるかに心配だと言います。


人体に何かしらの影響を与える、と言われている、
ヨウ素131の半減期は わずか8日、
半減期が30年と言われるセシウム137でも、
人間の体の中に入ったものは、尿などで排泄されたりして、
もっとずっと早い段階(70〜100日)で半減してしまうと言われています。
また、放射線は細胞を破壊しますが、
その細胞を ある程度修復出来る力を人間は持っているのだそうです。


ならば その、人間が持っている力を信じよう。
自分の中にある、放射線と闘う生命力を信じよう。
心と身体を出来る限り健やかに保って、
近くにいる子供たちや妊婦さんをさりげなく気遣い見守りながら、
一緒に立ち向かう力を蓄えよう。


そうして、あとは、
電気が点くこと、水やガスが出ること、電話が通じること、
ガソリンがあること、電車が動くこと、などなど、
普段当たり前に思っているそれらの享受が、
本当に幸せなことなのだ、と、しっかり感じながら・・
今までより少し深く、少し広く、資源のことに心を配りながら・・
祭りに、スポーツに、歌に、芝居に集うことや、
家族や友人とお酒を飲んだり、おいしいものを食べたり、
話したり、笑ったり、泣いたりすること、
それらすべてに、いくばくかの感謝と祈りを込めながら・・
普通に生きて行ければいい。


すべてを疑って怪しんで日々を過ごすより、
そのほうがずっと心軽く、健康的だと思うから――



私たちは、これからも、この故郷で生きて行きます。
どうか、同じ日本に住む皆さん、
そして世界中の皆さん、
一人でも多くの人が正しく福島を理解して下さいますように。
あと少しだけ温かい眼差しと友情を福島に寄せて下さいますように。



数日前までの暖かさで一気に満開になった桜が、
昨日の冷たい雨や風にもかかわらず、
散ることなく、寄り添うようにして美しい花を咲かせています。
その姿が、ただ華やかなだけでなく、きれいなだけでなく、
いつもの年に比べて一層、凛とした清々しい風情に感じられるのは、
なぜでしょうか。


明日になれば、また春の暖かさが戻る。
そうしたら、この、智恵子が愛したほんとの空の下で、
桜のお花見をしようと思います。


地震津波の爪あとを残す浜通りの海沿いや、原発周辺の地にも、
新たな木が芽吹き、花が咲き、鳥がさえずり、
普段と同じ往来や、子供たちの元気な笑い声、家族の温かい団欒が、
一刻も早く戻って来ることを祈りながら・・・・


                             翔




他県の被災者の皆さんまで心が行き届かなくてすみません。