『ラストホープ』(第10話)感想

『LAST HOPE/ラストホープ』(第10話)感想
冒頭のカンファレンスで、
町田恭一郎(中原丈雄)を救うには生体両肺移植しかない、
という結論になり、ドナー候補の二人の息子に状況説明、
父親と一緒に仕事をしていた次男で養子の恵介(石田卓也)は、
ドナーになることを即決しますが、
父親と確執があり、妻や子を持つ長男・真一(要潤)は拒みます。


「ドナーと患者の中立の立場に立つ。
それ以外に医者は何が出来るだろう・・」と悩む波多野(相葉雅紀)。
「町医者にしか出来ないことがあるだろう」という
橘(多部未華子)のアドバイスを受けて、
ドナーにならないと言った真一に迷いがあると感じた波多野は、
再び真一に会いに行くのですが・・


この時の波多野の医師としての姿勢に、
何だかじんわりと感動してしまった。
「後悔しない選択をしなければならないのは真一さん自身です。
(ドナーになってもならなくても)私たちはあなたの選択を支持します。
迷っているなら、いくらでも話を聞きますよ」
患者やその家族の立場として、
すごく重いもの(選択への責任)を突きつけられているのですが、
同時に、世間の目や心情的負い目を感じることなく、
自分の正直な気持ちで決めていい、
どっちにしても、医者はその結果を受け止め、全力を尽くします、と、
こんなふうに言ってもらえたら、言われた人間はどれほど安心か、
どれほど正直に自分の気持ちと向き合えるか。


結局、真一はドナーになることを決め、
移植手術へと着々と準備は進められるのですが・・


一方、橘(=四十谷希子)を追い回し、
暴露記事を書きまくっていた雑誌記者・宇田(前田亜紀)は、橘に会い、
彼女の父親・四十谷孝之(鶴見辰吾)の事件を追っていた際、
突っ込んだ取材をしようとして何らかの圧力が掛かり、
デスクに止められたことから、逆に、徹底的に真相究明しようと決意、
橘を記事にすることで四十谷が自分に接触して来ることを狙った、
と言うのですが・・
うーん、そのあたりはちょっと解(げ)せない感じがしました。
今まで彼女が記事にした内容が、皆、スキャンダラスなゴシップっぽくて、
宇田朋子という人間の、ジャーナリストとしての高潔な意志とか
矜持(きょうじ)が感じられなかったせいかなぁ・・
私の個人的な印象でしかないけど。


そして、ここでまたひとつ、大きな謎が発覚。
四十谷は、事件前、同僚に
「桐野を止められない。希子が狙われている」と言っていた、と。
・・いやいや、ラスト直前になっても、攻めて来る脚本です。


2012年3月、シアトル。
以前、高木(田辺誠一)をどん底から救ってくれた大森(小木茂光)が、
帝都大〜コロンビア大で遺伝子の研究員をやっていたのだけれど、
重篤な病気になり辞職。
本人でさえ死を覚悟しているにも関わらず、
何とか助ける道を探し出す、と手術を請け負う高木。
そんな彼に、大森はこう言います、
「きみは信念を曲げずに医者を続けて来た。
だがそれは、単に運が良かっただけだ。私の二の舞になるな」
患者の家族とのトラブルが、彼をリスク恐怖症にし、
結果的にそのことが、荻原(小池栄子)の母親を救おうとしなかった、
あの出来事に繋がって行った、ということなんでしょうね。
何だか私には、大森の臆病さが人間くさくて嫌いになれないんですが。


「運がいいなら、その運が途切れるまで医療の限界と向き合うと決めた」
最先端医療の真っ只中に飛び込んで行く決意を大森に語る高木。
リスクの恐れと闘いながら、自分を信じて突き進む、
この前傾姿勢は、センターの他のメンバーにも通じるものであり、
「あなたたち6人がなぜこのセンターに集められたのか・・」
鳴瀬(高嶋政宏)のこの言葉に繋がって行くものでもある気がします。


町田の手術は、倫理委員会からストップが掛かってしまいます。
リスクを恐れて二の足を踏む教授たちに、鳴瀬は、
「私は、リスクがあるからと言って、患者を見捨てることは出来ない。
医療の限界−−最先端の医療にたずさわれば、常にそれを思い知ります。
しかし、患者の、家族の、希望になれるのは、我々医者だけです。
生体肺移植は、今医者が出来る唯一の道です」
そう言って深々と一礼。 


そこから、鳴瀬の回想は、
1985年10月、このドラマの第1話冒頭シーンに戻るのですが・・
いや〜この流れのうまさに、思わずトリ肌。


この手術は医者として本当に正しいことなのか・・と葛藤する鳴瀬。
「でも、やらなければ5歳の男の子は死ぬ。
難しい手術だ、迷っているとミスをする。やるしかないんだ。
今出来る、医者として唯一の道だ」
そう応えたのが波多野の父(平田満)というところが、何とも切ない。


倫理委員会を説得し、やっと町田の移植手術が出来る・・という矢先、
今度は、町田本人から、
息子二人の身体を傷つけてまで移植をすることは望まない、と言われ・・


医者の「救いたい気持ち」と、患者の「助かりたい気持ち」が、
ぴったりと重なり合わないこともある・・
ただ存命させればいい、という単純な問題ではない。
「人の命を救うことは本当に難しい」という鳴瀬の言葉が重いです。


さて、次回はいよいよ最終回。


荻原(小池栄子)の母親を見捨てた大森(小木茂光)を
高木(田辺誠一)が手術で救ったこと・・
古牧(小日向文世)の研究の実用化を、
副島(北村有起哉)が急いだこと・・
橘(多部)が、父親の過去をあえて背負おうとしたこと・・
そして、波多野(相葉)がこの世に生まれ、医師になったこと・・


そんな彼らの、人としての想いや、医者としての姿勢や行動が、
何らかの縁(えにし)で繋がって、やがて報(むく)われる・・
そう、「すべてが報われる」・・そんな最終回であって欲しい、と願っています。


ラストホープ
放送日時:毎週火曜 夜21:00- フジテレビ系

キャスト
相葉雅紀 多部未華子 田辺誠一 小池栄子 北村有起哉 桜庭ななみ 
平田満 高嶋政宏 小日向文世 / 中原丈雄 要潤 石田卓也 高橋一生
スタッフ
脚本:浜田秀哉 演出:谷村政樹
プロデュース:成河広明 古屋建自
『ラストホープ』公式サイト