歌舞伎あれこれ(感想)

歌舞伎あれこれ(感想)
最近、WOWOWの歌舞伎中継に はまっています。
分かりにくい、という苦手意識を克服出来れば、
確かな芸に裏打ちされた舞台は、やはり観応えがあって面白い。
ご贔屓が出来るとさらに楽しくなる。w
・・というわけで、最近観た歌舞伎中継の感想いくつか。


浅草歌舞伎2011南総里見八犬伝
来年の『八犬伝』(舞台)の予習もかねて観たのですが、
信乃と浜路の別れの場(浜路くどき)がメインで、
八犬士が集まって名乗りをあげたところで終わってしまいました。
1時間半じゃ、仕方なかったですかね。
ごうつく爺の亀治郎さんがあまりにもはまっていて、びっくりしました。w
(この壮大な作品を、来年3月『八犬伝』の脚本担当・青木豪さんは
どんなふうにまとめるつもりなのか、改めて興味しんしん)


浅草歌舞伎2012『廓文章吉田屋』
途中から観たのですが、もう愛之助さんが可愛くて可愛くて。
壱太郎さんは、ぽってりした風情が魅力的。
まだ若いので、演技自体は硬めなのですが、
もっと練れて来たら、
しっとりとした情感や色気がさらに出て来るんじゃないでしょうか・・
なんて、しろうとなのに あいかわらず上から目線ですみません。


平成中村座『傾城反魂香』
仁左衛門さんと勘三郎さんが夫婦役。
何気なく観始めたのですが、
仁左衛門さんが、
吃音(どもり)のせいで気持ちを上手く言葉に出来ない男のもどかしさを
見事に表現していて、
その切なさに、観ているこちらの胸がギュッと痛くなるほどでした。
勘三郎さんの、口は達者だけど少し身を引いて夫を立てる女房と、
すごくいいバランス。

 

ふたりの心持ちがこちらの心にすごく響いたのは、
最初の記者会見の印象が残っていたせいもあるかもしれない。
勘三郎さんが病気から復帰したことを
仁左衛門さんが挨拶がしどろもどろになるくらい喜んでいたので。


平成中村座『一條大蔵譚』
勘九郎さんの阿呆ぶりが、もうおかしくておかしくて。
初出から、ふわ〜んと気の抜けた感じを見事に演じていて、
さらに惚れ直してしまった。
そこからキリッとりりしい二枚目に変わる様も見事でした。
七之助さんは、こういう役が似合うなぁ。
可愛らしい、というよりは、凛とした大人の女性を演じられる人。


浅草歌舞伎2011『黒手組曲輪達引』
亀治郎さんの早替りと水入りがありました。
観る方は楽しいですが、やってる方はかなりハードそうで、
水入り後はかなり息があがっていました。
(『新・近松心中物語』の田辺誠一さんを思い出してしまった)
三役の中では、番頭役が楽しかったです。
助六をやるには、亀治郎さんでは ちょっとセンが細過ぎた気がしますが、
一見 その人の任ではないような こういう冒険が出来るのも、
(若手中心の)浅草歌舞伎ならでは、なのかもしれません。

 

他には、紀伊国屋文左衛門愛之助さんが、さすがの風格。
また、揚巻の七之助さんが本当に綺麗で押し出しも良く、
玉三郎さんに続くような立女形になって行くんじゃないか、
という期待を抱かせてくれました。


平成中村座『髪結新三』
ほぼ歌舞伎初心者の身としては、
世話物は分りやすくて物語にすんなり入って行きやすかったです。
勘三郎さんの髪結新三は、前科のある刺青もので、
娘のかどわかしなんてことを平気でやってしまうような悪い男。
しかし、彼を悪役として単純に憎み切れないのは、
もともと生業の髪結いをしっかりやっている、
その腕のよさ・手際のよさを見せられているからだし、
勘九郎さんがまた、
シャキッとした江戸っ子風情を見事に演じているからでもあります。

 

その新三の生きっぷりに惚れ込んでる弟分の勝奴を演じる勘九郎さん。
新三内(家の中)での新三と客人とのやりとりを後ろで聞いている、
その様子を、カメラが(たぶん あえて)
お父さんの勘三郎さんと一緒の画面に入るように撮っているんですが、
新三の言葉にいちいち反応する勝奴が本当に魅力的で、
このシーンを中継で観ることが出来た私は幸せだなぁ、と思いました。
そうして、勘九郎への傾倒に、さらに拍車がかかるのであった・・w

 

他には橋之助さんの家主・長兵衛が、
新三・勝奴をケムに巻く様子が何とも面白かった。
歌舞伎の人たちは、みんな本当にいろいろな役をやるなぁ、と
改めてその奥深さを思い知らされた気がします。


私がこんなに肩肘はらずに気楽に
歌舞伎を観ることが出来るようになったのは、
WOWOWの副音声ガイドのおかげ、と言っていいかもしれません。
落語家の方の解説なので、すごく分かりやすく、
時代背景や、人物紹介、歌舞伎の約束事などを教えてくれるほか、
たまにツッコミが入ったりすることもあって、毎回楽しい。

次回は『め組の喧嘩』。これもまた楽しみです。