『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』感想

映画『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』感想【ネタバレあり】 
面白かったです!
1回観ただけで、すごく元気を貰った気がしますし、
あと2〜3回観たら、
もっともっと私の中にパワーを充電させられるんじゃないか、
なんてことを思いました。


「これが生きてくってことなんだ」
この映画が伝えたいことは、おそらくこの、
マ男(小池徹平)が最後につぶやいた一言に集約されるような気がします。


いじめをきっかけに不登校になり、ニートになり、引きこもっていたマ男。
母親の事故死を切っ掛けに、働くことを決意。
しかし、この不景気の世の中、
高校中退(履歴書では中卒扱い)の彼を雇ってくれるところはなく、
やっと採用された会社に、崖っぷちで就職。
ところが、この会社が実は・・というお話。


最初、原作が2ちゃんねるのスレから生まれた、と聞いた時、
電車男』のように、PCの向こうの人たちに励まされ、勇気づけられつつ、
主人公が前に進む物語なのかなぁ、と思ったら、
彼らは決してマ男に味方するわけではなく、ただチャチャを入れるだけで、
助けてくれないんですよね。
2チャンネル(映画ではBちゃんねる)の住人を傍観者のままにして、
主人公が、自分で考え、自分で結論を出して行く、
そのあたりのPCとの距離感が、私には、好もしく感じられましたし、
家族(父・北見敏行/母・朝加真由美)との関係も、
お涙頂戴でなく、すっきりとドライに描かれていて、
そのおかげで、すんなりと感情移入出来たような気がします。


この映画が面白いかどうかというのは、
人それぞれ感じ方が違うかもしれません。
おそらく、ピラミッド社会の上の方で働いている人とか、
自分に自信を持って生きている人たちには、
ピンと来ない感覚かもしれない。


けれど、マ男のように、
臆病で、傷つくのが怖くて、自分の殻に閉じこもって、
人との本気の関わり合いを避けている、
そういう、他人からも自分からも逃げてばかりの人間にとって、
この映画は、その最初の最初の、本当に最初の一歩を踏み出すために、
背中を押してくれるものになっていたように思います。


自分が閉じこもってしまったことを、誰のせいにするんでもない、
自分の始末は自分でつけなければならない、
食べるために、生きるために、稼がなければならない、
答えは部屋の中にはない、PCの中にもない、
誰かと思い切りぶつかって、傷つけて、傷つけられて、
心が痛んで、苦しくて辛くて・・
でも、間違いなく、そこから生まれるものがある。
そこから繋がって行くものがある。
だから、さあ、差し出したこの手を掴んで、外に飛び出せ!
それが「生きる」ってことなんだ!と。


ああ、まさにそれって、
小公女セイラ』の千恵子にも言えることなんじゃないのか、
「ドッグフード」の男や、宮原(瑠璃の島SP)にも
繋がることなんじゃないか・・とか、ついつい妄想全開。
(弱い人間に弱いんだ、私は!)


難を言えば、非常にテンポ良くスピーディに話が進むので、
ひとりひとりの掘り下げ方(エピソード)が浅く、
しっかり感情移入する前に、どんどん場面転換してしまったこと。
登場人物に人間的な深みが感じられない気がして、
ちょっと残念に思いました。


まぁ、それでいい(深く背景を描かないのが正解)と
思えた役もあったんだけど、
少なくとも、藤田(田辺誠一)と木村(田中圭)に関しては、
背景をもうちょっと描いて欲しかったなぁ、と思いました。
1時間40分という長さじゃ、このぐらいが限度なのは分かるんだけど、
なんかこう、もうちょっとカタルシスが欲しかった気がします。
演じている田辺さんや田中さんに対しても、
為所(しどころ)がなくて、少し気の毒な気がしてしまった。


藤田に関して言えば、人物背景を、自分の演技で見せるのではなく、
中西(マイコ)の言葉で明らかにされる形なので、
やりにくいところもあったのかもしれないし、
こういうパーフェクトな人間を演じる難しさもあったかもしれないけど。


でも、藤田にしても、木村にしても、
もうちょっとふくらませられたところを、あえてこのぐらいでストップさせて
マ男をメインにして、ストーリーの流れや勢いを重視した、
そういう展開にしたからこそ、
一番伝えたいことを まっすぐに伝えられた、という気もしますが。


こういう密室群像劇は、
キャストのバランスがとても重要だと思うのですが、
小池徹平くんを始め、品川祐さん・池田鉄洋さん・マイコさん・
中村靖日さん・千葉雅子さん・森本レオさん、
そして、田辺さんや田中くんも、皆、すごく嵌まっていて、
しかも、俳優同士の力が拮抗しているので、
彼らがぶつかり合いながらひとつひとつの場面を作っているのを観るのは、
すごく楽しかったです。
(あまりに楽しかったので、このメンバーでドラマ化しても
面白いんじゃないか、なんて妄想してしまったw)


小池くんが、なかなか達者なところを見せて、予想以上に良かったですし、
田辺さんも、田中くんも、役自体に物足りなさはあったものの、
それぞれのポジションには、うまく納まっていたと思います。
ふたりとも、そのあたりは抜かりないですね、さすがに。


あと、CGも良かったです。
三国志のシーンも楽しかったけれど、
ペラペラの紙切れのようなNEETマ男が、
ペラペラであるゆえに訴えていることがあったような気がしました。


映画を観ていて、
「ブラック」とか「限界」というのは、実は、
自分で自分を制限している言葉なのかもしれない、
そして、仕事は、最終的には体力勝負なんだ!
と改めて気づかされましたw。
まさに、会社にとって、社員は兵士。
ソルジャーゲ〜ット!(by黒田社長)ってことなのよね。
(う〜〜・・笑えない・・)


この映画は、
ファーストガンダム三国志の基礎知識があると、なおさら楽しめますw。
どっちも、ある程度知っていた私は、
おおいに楽しみ、笑わせてもらいました。
爆笑じゃなくて、クスクス、って程度だけど・・
なんか少〜し優越感に浸れた気がして、心地良かったです。


それから、思いがけず、
田辺さんの諸葛亮孔明を観る事が出来て、眼福〜w。
特に、周瑜田中圭)の背後から捉えた、正面をキッと見据えた表情は、
まさに絶品でございました。
彼の孔明で『レッドクリフ』を観てみたかったなぁ!なんて、
金城武ファンに石投げられるようなことを思ってしまいましたw