『容疑者Xの献身』感想
すご〜く面白い映画でした。想像以上でしたね。
私は、原作にパラパラ目を通したぐらいなんですが、
脚本（福田靖）も、撮影（山本英夫）も、音楽（福山雅治他）も、
演出（西谷弘）も、原作に敬意を払って、非常に大切に作り上げた、
という感じが伝わって来ました。
しかし、何と言っても、この映画が、
確実に心震わす「純愛物語」になった一番の功績は、
メインキャラに、堤真一・松雪泰子を据えたことだった気がします。
ＴＶ放送時に人気のあった湯川学（ガリレオ）をメインにするのではなく
「石神哲哉の‘容疑者Ｘの献身’」という作り方にしたことが、
功を奏した、と言えるかもしれません。
ネタバレすると映画の魅力が半減してしまうので、
詳しいことは書きませんが、
とにかく、風采の上がらない石神のビジュアルを、
あそこまで徹底して作り上げ、
その上に、石神の内に一瞬一瞬湧き上がる感情のありようを、
これ以上ないぐらい的確に、表情や動きに写し取ってみせた堤真一、
という俳優に、私は今度こそ、「参りました」と、
全面降伏するしかありませんでした。
（こういう降伏は、『フリック』の香川照之さん以来かも）
う〜〜ん・・『ＳＰ』や『クライマーズハイ』の時は、
「まだまだ〜っ」って、少しは踏ん張っていられたんですけどね〜
ここまで徹底的にやり込められちゃうと、
むしろ、喜んで降参したくなっちゃったりして。（笑）
まぁそれも、石神哲哉という役が、
上の二作品の時よりずっと、私にとっては 直球ど真ん中の役だった、
ってことも大きいには違いないんだろうけれど。（笑）
石神の想い人・花岡靖子に松雪泰子さん。
この人も、本当にはずれのない女優さんで、
守備範囲の広さも実に私好み。（笑）
石神との初めての出逢いのシーンは、女神のように美しくて、
そこから始まる石神の靖子への純愛が、まったく無理のないものに思えた。
はかなげな美しさ・けなげさ、が、あの細い身体全身で表現されると、
もうもう、私だって「惚れてまうやろ〜っ」と言いたいぐらい。（笑）
そんな靖子を食いものにしようとする、元夫は長塚圭史さん。
『せかいのおわり』（風間詩織監督）の店長とはまったくの別人で、
本当に嫌なヤツ！そして怖い！
だけど、彼のその「怖さ」が、全ての始まりでもあり、
そこが弱いと「人殺しという罪へのつぐないが愛の証にもなる」という、
この作品を貫く「芯」がぼやけてしまうわけで。
彼が靖子の元夫として登場したことが、
この映画の序盤を、見事に支えていたように思いました。
靖子のひとり娘・美里は、金澤美穂さん。
これがはじめての映画出演とは思えないナチュラルな演技。
またひとり、楽しみな女優さんが出て来たなぁ！
湯川の友人、草薙役の北村一輝さん、
いつもの濃いキャラでなく、普通に刑事をやってたのが嬉しかった。（笑）
ＴＶ版で湯川とコンビを組んだ内海（柴崎コウ）が、
今回は、湯川のさらに外側にいる傍観者になってしまっている、
というあたりで、不満を持ってる人もいるかもしれないけれど、
私は、今回はそれで正解だった気がする。
湯川と甘い雰囲気にならなかったのもよかったと思う。
ふたりには、その「あっさり感」が似合ってるんじゃないかな。
さて、湯川学を演じた福山雅治さん。
月９の『ガリレオ』を何作か観ていて、
湯川は確かにとても素敵だけれど、
探偵役としては陰影が足りない感じがして、
ちょっと物足りなく思っていたのだけれど。
今回は、その陰影が見事に浮き立って、
非常に魅力的な探偵・ガリレオになっていたような気がします。
そもそも探偵（事件の謎解きをする人間）というのは、
事件の当事者として真ん中に立つことは出来ないんですよね。
だから、湯川がどんなに魅力的な人物でも、
探偵役であれば、主人公にはなれないわけで。
だけど、ＴＶドラマでは、湯川が物語の中心人物になってしまっていて、
私としては、そのあたりもちょっと不満だったわけですが。
まぁ、演じていた福山さんが、本当にかっこ良かったからなぁ、
視聴者を満足させるためには仕方なかったんだろうけど。
でも、この映画の湯川は、物語の中心からきっちりはずれていて、
犯人との距離感がとてもよかった。
思わぬ形で再会した石神が、事件に関わっていると確証すればするほど、
湯川の、石神への、奥深いところでの共感・・というか、共振・・というか、が
非常に控え目に彼の中で蓄積されて行く、
そのあたりを、福山さんが、
堤さんより２歩ぐらい下がったところで絶妙に演じていて、
「ガリレオ・湯川学」が、
「福山雅治」という名前の重みや人気を越えた
真に魅力的なキャラクターとして生まれ変わった瞬間を、
目撃したような気持ちにさせられました。
ただひとつ、かすかな不満があるとすれば、
公式サイトで西谷監督が話していた石神と湯川の最後の関係性が、
あとほんの小さじ半分、足りなかったかなぁ、というところですが、
それは私としても、あまりにも「求め過ぎ」のような気がします。（笑）
―――ということで、とりあえず、
私のプロフィール（ブログ右上「showm」参照）「大好きな俳優一覧」に、
堺雅人さんに次いで、堤真一さんもめでたく仲間入り、でございます。（笑）
