『風林火山』から感じたあれこれのこと。

風林火山』から感じたあれこれのこと。白虎隊 三丁目の夕日
★林の中―――――
このドラマを観ていて感じるのは、非常に「林の中」の描写が多い、
ということです。
旅の道中はもちろん、ちょっとした小競り合いから、真剣勝負まで、
闘うシーンは、ほとんど林の中でのことが多い。
どこにでも電柱が立ち、道路は舗装されてしまっているこの時代に、
時代劇に見合った自然環境(ロケ地)を探すことが難しい、
という事情があってのこともあるだろうけれど、
何だか、私は、勘助(内野聖陽)が、
薄暗がりの茨道(いばらみち)から抜け出せずあえいでいる感じもして、
面白いなぁ、と感じました。
たぶん、制作側は、そこまで狙ってはいないだろうとは思いますが。(笑)


★温度―――――
勘助と兄・貞久(光石研)が剣を交えたシーン。
貞久が剣を捨て、ふたりが言葉を交わすところで、
アップになった顔に汗がにじんで、息も少し荒くて、
それを観た時に、ものすごく「リアル」を感じてしまったのです。
何だろう、画面から伝わる温度、というか、熱というか、
久しぶりにそういうものを感じたなぁ、と。


話は逸れますが、
年末にTV放映されていた『北の零年
明治政府の命令によって、極寒の北海道に移住を余儀なくされた
徳島の人々の物語ですが、
とても丁寧に作られている印象はあったけれども、
私には、「極寒」という「温度」を画面から感じることが出来なかった。
それがすごく残念で、途中で観るのをやめてしまった、
ということがありました。
たまたまその数週間前に、30年前の映画『八甲田山』のDVDを観て、
そこに描かれた「冬山」の厳しさに、
本当に身も心も凍る思いをした者としては、
そういう部分での物足りなさを感じてしまったんですね。
(私が観ていない後半で、ちゃんと描かれていたかもしれませんが)


お正月に放送された『白虎隊』も、
やはり、同じような思いに囚われたのですよね、実は。
白虎隊が、どしゃぶりの雨の中、鶴ヶ城に落ち延びようとするシーン。
山下智久田中聖くんら隊士役の人たちは、
それこそ泥だらけになりながら、
本当に一生懸命演じていた、と思うのですが、
どしゃぶりのはずなのに、画面から、陽の光を感じてしまうことが多く、
(おそらくは、天気の良い日に、雨を人工的に降らせていたのでしょう)
隊士の心情に気持ちが及ぶ前に、気が削がれてしまった、
ということがありました。


ちなみに、この『白虎隊』で、私が一番好きだったのは、
鶴ヶ城を明け渡す際、全員で、城をきれいに掃除するところ。
憎い敵に渡すのだから、汚いままでもいいじゃないか、
と考えるのが普通なんでしょうが、そうじゃないんですね。
鶴ヶ城を最後まで愛しぬき、闘った相手に礼義を尽くすことで、
人間として、会津人として、の誇りを示す。
そこに、会津人気質というものが一番顕著に表現されていた
ように思われて、一気に涙が溢れて来たのでした。


温度、というお話で、もうひとつ。
『ALWAYS 三丁目の夕日』で、ヒロミ(小雪)が、
冬の朝、誰にも告げずに、ひっそりと店を出て行くシーン。
寒さで頬を赤くしたヒロミが店を振り返った時、白い息が漏れるのですが、
それをCG(正確にはVFXと言えばいいのかな)で
表現してたんですよね。
CG大流行の昨今、何でもかんでも簡単に解かり易くするために、
安易に、どこにでもそういうものを使ってしまうのは
好きじゃないのですが、
この時は、小雪さんの清楚な佇まいと白い息に、
何だか妙に感動してしまった。
「CGを通して何を伝えたいか」が、
そのシーンに凝縮していたような気がして。


★出演者たち―――――
今まで、割と狭い範囲でしか動きのなかったこのドラマですが、
ここに来て、ようやく駿河まで話が及ぶようになりました。
で、梅岳承芳(後の今川義元)と雪斎(後の軍師)が登場。
いや〜〜、いいですねぇ、ふたりとも怪しげで。(笑)


伊武雅刀さん/雪斎
こういう役作りもあるんだなぁ、と、改めて驚かされました。
あのあまり口を開かない話し方もですが、
眼で表現されるものがまったくなくて、
ずっと どよ〜んとしたまま(笑)なので、
何考えているんだかが、まったく読めないんですよね。
いずれ義元の軍師として、
武田側の軍師・勘助とぶつかることになるんでしょうが、
非常にシャープで「動」の魅力全開の内野聖陽さんの勘助に対し、
じわじわ責めてくる「静」の伊武・雪斎、
なんだかそのあたりも、楽しみになって来ました。


谷原章介さん/今川義元
現代のドラマとか、ましてMCなどよりは、
私は彼の時代劇が好きなんですが。(笑)
興味を持ち始めたのは『新選組!』で伊東甲子太郎を演じた時。
まるであて書きされたんじゃないか、というぐらい嵌まっていて、
びっくりしました。
以後、綱吉(大奥〜華の乱)、
足利義昭明智光秀〜神に愛されなかった男)、
そして今回と、
毎回、みっちりと中身の濃い役を、軽々とこなしていて、驚かされます。
この人が演じて来た役は、
こうしてみると、どこか弱いところを持っている人が多い。
けれども演じている彼自身は、そういう役を、自信を持って演じている‥‥
いや、ご本人に直接確かめたわけじゃないから、
私の推測に過ぎないんだけど(笑)
でも、弱い役を演じていても、田辺さんの時のように、
決して演じている谷原さん自身を痛々しいとは感じないんですよね。
(田辺さんと谷原さんには、何か、
決定的に違うものがある気がするのですが、
それが何なのか、については、まだ、うまく言葉になりません)
そんなこんな、で、私が感じた谷原さんの味わいは、
高級な練り羊羹(ようかん)。
渋いお茶と一緒にいただきたい気がする。(笑)


田辺誠一さん/小山田信有
3話では、かなり硬派な役作りをしてたと思うのですが、
今回(5話)は、うって変わって、やわらかテイスト。(笑)
雪斎から、寝返りの代償として「晴信(市川亀治郎)の妻に三条の姫を」
というかなりおいしい話を持ち掛けられたから、
思わず興奮しちゃった、というところもあるでしょうが、
私としては、信虎(仲代達矢)とは叔父・甥の関係である
(信虎の妹が信有の母)というところに注目したい気もしました。
ただの主従関係ではない、親戚筋としての親しさ、というか。
たとえ、政略的な意味合いでの親戚ではあっても、
信有にとっては、
たとえば板垣(千葉真一)や甘利(竜雷太)などよりずっと、
信虎とのほうが近しい感じがあるんじゃないか、
それが、あのシーンにもほのかに出ていたような気がする‥
なんて、やっぱり読み過ぎかしらね。(笑)


ちなみに、三条家というのは、
清華七家のうち、上から2番目の高い家柄で、
今回話に出た姫の父・三条公頼は朝廷の左大臣という高位にあり、
姉は細川晴元夫人、妹は本願寺顕如夫人。
そりゃ、信有が喜ぶのも無理はないか。(笑)


待てよ。
この縁組に信有が絡んでるとすると、のちのち、
由布姫(柴本幸)派の勘助と、三条夫人(池脇千鶴)派の信有の対立、
みたいなことにはならないだろうか。
勘助が由布姫に惚れるというのは間違いないわけですが、
信有も、悲劇的な三条夫人を護ろうとするうちに
淡い恋心を抱くようになる、とか。
‥‥って、あいかわらず勝手に妄想膨らませて
ストーリー作っちゃってます、大森さんすみません。(爆)