『悪童』(TEAM NACS第15回公演/WOWOW)感想
TEAM NACSの『悪童』をWOWOWで観ました。
大泉洋さん、安田顕さん、戸次重幸さん、音尾琢真さん、森崎博之さん‥
今やメンバー全員がTV・映画・舞台等で大活躍していますが、
TEAM NACSとしての公演を観るのは、私は初めて。
脚本が古沢良太さん、というところに惹かれたこともあって、
録画してあったものを遅ればせながら視聴、
やはり古沢さんの「設定」と「言葉の応酬の面白さ」は間違いなし!
と改めて思った次第。
そこに、演出・マギーさんの「動きの応酬の面白さ」が加わり、
さらに、チーム独特の持ち味が重なる…
最初の出から、5人のキャラクターが、
当て書きじゃないか、と思うほどぴったり役にはまっていて、
素(す)なんだか演技なんだか‥という自然な空気感で、
なんだかとても微笑ましかったです。
チーム全員集まった、チームのメンバーしか出て来ない、ということで、
彼らが、なおさら伸び伸びとキャラクターを捉え、
心地よい「場」を作りながら演じているようにも思えました。
*
バブル期の遺産とも言われる取り壊し寸前のボーリング場、
そこに一人また一人、40過ぎの男たちがやって来る。
彼らは同じ中学の元卓球部で、ある理由によって集められた。
その理由とは…
―― まだ、かろうじて
中学生時代を遠い過去ではないものとして語れる40過ぎの男たち。
エアーボーリングとか、かくれんぼとか、
そんなくだらないことが出来るひょっとしたら最後の年頃なのかもしれない。
ばかばかしいことを本気で一緒にやってくれる仲間‥悪友‥悪童たち。
何でもありのバカ騒ぎに日本中が酔ったバブル期、
ちょうど青春真っ只中だった彼らは、
派手な内装の、かつて『竜宮』と名付けられた建物の中で、
まるで中学生に戻ったように走り回って遊ぶ…
それは、まるで、遠ざかりつつある青春にしがみつこうとする彼らの
最後のあがきのようにも見えます。
人生の半分を折り返すところまで来てしまった、
甘酸っぱい青春の最後のカケラを振り払って決別しなければならない、
そんな彼らのいつまでも見続けたい夢がそこに埋まっている、と
信じているかのような…
やがて、5人は、
卓球部のチームメイトの自殺未遂という中学時代の事件を掘り起こし始め、
そのあたりから、彼らは現実に引き戻され、
並行して、それぞれが抱える 悩みや もどかしさや 閉塞感が、
どんどん浮き彫りになって来ます。
現実は甘くない…
40代に入って、それぞれが背負ったいろんなものが、
その肩に重くのしかかり始めた、そんな彼らの内にある焦燥が、
何だか 切なくも愛おしくも感じられて‥
一時(いっとき)チクチクした痛みを伴った過去を共有した彼らは、
仕方なく前へ進もうとするかのように(本当の大人になるために?)
『竜宮』を出て行こうとするのですが…
ここからのエピローグが何とも味わい深かったです。
自殺未遂のチームメイトの「今」が、彼らをまた中学生に引き戻す…
青春との決別なんてする必要はない、
それらを捨て去るんじゃなくて、あきらめるんじゃなくて、
全部背負って「自分」として生きて行く その覚悟をすればいいだけのこと…
最後の彼らの笑いの中に、
ふと、彼らの年代をとうに過ぎてしまった私自身の、
だからこそ許されるのかもしれない彼らに対する優しい肯定と、
甘酸っぱいノスタルジーが、
ふわりと ほのかに 心に舞い降りたような気がしました。
TEAM NACS 第15回公演 『悪童』
放送:WOWOW
脚本:古沢良太 演出:マギー
出演:TEAM NACS(森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真)