今さら『BLEACH 死神代行篇』感想

2018年7月より映画公開。今さらながらの感想です。原作は未読です。

死神とか‥ホロウとか‥ソウルソサエティとか‥こういった独特の世界観を持つ作品というのは、まず初めに、その世界がどういう成り立ちであるのか、登場人物がどういう背景を背負っているのか、を観る側にある程度理解してもらわなければならないと思うのですが、イラストやアニメ(これがまためちゃくちゃカワイイw)などをうまく使って分かりやすく説明しようとする工夫が感じられて楽しかったです。

ただ、観ている側の私がちゃんとそれを十分理解し納得出来たかというと、ちょっと消化不良だったかなぁ‥
物語が人間界だけでない重層的な世界を表現しようとしていたので 仕方ないところもあるんだろうけど、どうしても 登場人物全体に説明不足の感は否めず、ある人物の説明を他の人物にさせていることが多いので、台詞そのものも説明口調になってしまい、人となりの魅力を十分表現出来るまでに至っていないように感じられたのが残念でした。

それと、全体の流れはそれほど複雑ではないので ある程度は掴めたのですが、物語の肝(きも)になるんじゃないか、と(私が勝手に)思った、ルキアの一護に対する「情」が、具体的にどういったものなのか、が、私にはしっかり伝わって来なかった。
なぜルキアは一護に惹かれるのか‥
霊圧が強いから、というだけでない、そしておそらく 恋愛 とかいう甘酸っぱいものでもない、たぶんそこには、「家族」に対する屈折した憧れ・羨望があるのではないか、という気がします。弟(けっして兄ではないよなぁw)に対するような感情、と言ったらいいか。私としては、観ていてそれがルキアの気持ちとして一番しっくりくる気がしました。
なので、ルキアの孤独感みたいなものが もうちょっとしっかり描かれ、そこに、一護と、彼の家族や友人たちとの日々の暮らしぶりがもっと絡んで来ると、ルキアの心の揺らぎが、よりストレートに 観る側に伝わったんじゃないか、と。

とは言え、あんまり難しいことを考えずに観る分には楽しい映画だったことは間違いないことで。
全体的なビジュアルのセンス、ロケーション、スピード感、が良いので、画面を観ているだけで楽しかった。(珍しく3回もリピしたw)
一護の初登場シーンの高架下、一護やルキアがホロウと戦う住宅街や公園、二人が特訓する橋の下とか、遠景にある高層ビルと手前の大きな木(画面内のバランスが絶妙!)とか「絵になる」場所が多くて、いちいち感激して、で、ロケハン大変だっただろうけど面白そうだな~、なんてことまで考えたりして。

全体的にスタイリッシュな空気感が漂う画面ではあったのだけど、特訓シーンはアナログっぽくて、昔のスポ根マンガを観ているようで、それもまた興味深かったです。そういう空気をあえて作っている、リスペクトした上であえて一護に「汗まみれになること」を求めているようにも感じられて。

その、ちょっと懐かしい香りみたいなものに惹かれてしまった、昭和のど真ん中を生きて来た私みたいな世代wには、最後の戦いの場(空座駅前)の大掛かりなオープンセットは 特にワクワクさせられるものでした。
こういう映画に付き物のVFXとかCGとかもまったく違和感なくて楽しかったのですが、その魅力に安易に頼り過ぎない、ウルトラマンと怪獣がミニチュアセットを豪快にぶっ壊しながら戦っているみたいな、一瞬でなくなってしまう 後戻り出来ない中で身体張ってる感じが、一種のスポーツを観ているみたいな爽快感にも似ていて、演じるほう(撮るほうも)は大変だったと思うけど、観ているほうはすごく楽しかったです。

出演者。
一護の福士蒼汰さん。正直、今迄この人の魅力をイマイチ掴みかねていたのだけど、今回は、心地よく思いっきりよく 役 に飛び込んでいたように感じられて、すんなりと気持ちよく入って行けました。おちゃらけてるところとウエットな部分のバランスがいいのは、本人もだけど、スタッフの一護という役の作り方も良かったのかもしれない。
ルキア杉咲花さん。この人のちょっと陰の入った少年のような雰囲気は、こういう役に合っていると思います。ただ、ルキアそのものがしっかりした背景(そこに至るまでの必然)を十分に与えられていないので、ちょっともったいない感じがしてしまった。
恋次早乙女太一さん。この人の殺陣はさすがに見ごたえありました。刀を持った時の構えがかっこいい。白哉とのバランスも良かった。
白哉(MIYAVIさん)のひんやりした空気感にはちょっとびっくりしてしまった。横顔の美しさ+あの髪型が似合っちゃうって相当すごいことなんじゃないだろうか。
雨竜(吉沢亮さん)の立ち位置がいまいちよく理解出来なかった(クインシー一族が具体的にどういうものなのか、とか、なぜ死神に滅ぼされたのか、とか)のと、チャド(小柳友さん)や織姫(真野恵里菜さん)が、しどころがなくて可哀そうだったのが、ちょっと残念。そこまで丁寧に描く時間がなかったんだろうな、とは思いましたが。(そのあたりは続編で、という思惑もあったのかもしれませんが)

最初観た時、ひょっとしたら一護の母親・真咲(長澤まさみさん)は以前は死神だったんじゃないか、だから一護や妹たちは霊力が強いのではないか、と思ったのですが‥違ったのね。(観た後でウィキ読んで知ったw)
ルキアにあの男は殺せまい。情がうつっている。死神にとって情というものは病に等しい。罹(かか)れば衰え、根を張れば死ぬ」という白哉の台詞を聞いて、勝手に一護の父親・一心(江口洋介)と真咲の「人間と死神の道ならぬ恋」みたいなことを妄想してしまったんだけどw。
見事にはずれましたが、そんなこんなあれこれ妄想を広げるのは楽しかったです。

浦原喜助田辺誠一さん。現世に残った元死神、ということですが、空気感みたいなものはある程度うまく伝わっていた気がします。ただ、この役も、雨竜やチャドと同じように 書き込み不足という感じで、田辺さんの演じ方としても、喜助をしっかり掴まえきれていないように私には思えました。う~ん、田辺さんだったら、もう一味(ひとあじ田辺さんなりの喜助への解釈を入れ込むことも出来たんじゃないか、と。(もうちょっと深い「喜助@田辺」を観たかった、というファンのわがまま、ご容赦)

個人的には、一心・真咲・喜助でスピンオフ作って欲しいですw。


BLEACH 死神代行篇』
公開:2018年7月20日
監督:佐藤信介 脚本:羽原大介 佐藤信介 原作:久保帯人BLEACH
音楽:やまだ豊 主題歌:[ALEXANDROS]「Mosquito Bite」
撮影:河津太郎 編集:今井剛 製作:和田倉和利 製作総指揮:小岩井宏悦
制作会社:シネバザール 製作会社:映画「BLEACH」製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画
出演:福士蒼汰 杉咲花 吉沢亮 真野恵里菜 小柳友
田辺誠一 早乙女太一 MIYAVI 長澤まさみ 江口洋介
公式サイト