今さら『私のおじさん~WATAOJI~』感想

昨年(2019)1月、毎週金曜23:15からテレビ朝日金曜ナイトドラマ枠で放送された全8回の連続ドラマ。今さらながらの感想です。

岡田結実さんの初主演ドラマ。
深夜帯の放送でもあり、コメディ寄りの軽めのドラマなのかな、と思って観ていたのですが、まぁ確かに くだらない・バカバカしい(バラエティ制作チームの話なので)シーンはあるのだけれども、そこで働いている人たちは、悩んだり迷ったりしながら一所懸命汗かいて自分なりにちゃんとしっかり仕事をしている、これはバラエティ業界の舞台裏を描いたお仕事ドラマであり、ひかりを始めとしたメンバーの成長ドラマ。
コメディ定番の面白さが無理矢理な感じではなくて、自然に笑わせられ、そして泣かされ、いろんなことを考えさせられる、温かいドラマだな、と思いました。
妖精のおじさんが突然現れたり消えたりする、なんていうとんでもない設定なのに、ドラマとして伝えたいことが ほとんど引っ掛かりなくすんなりこちらに伝わる、それが可能だったのは、脚本が、コメディということにこだわり過ぎず無理して笑わせようとしないで、一人一人を、単純で薄っぺらではなく ある程度の深みを持った人間として描いていたからだし、演じていた人たちがまた、コメディ要素もシリアス要素も自分の役に自然に練り込んで演じていたから。 とにかく、芸達者が集まった感があって、本当に安心して観ていられました。

出渕チーフAD(小手伸也)やら九条AD(戸塚純貴)やら馬場AP(青木さやか)やら、全体的におちゃらけて楽しいチームの中で、一人まっすぐでブレない千葉D(城田優)の存在が大きかった。彼の塩辛さがちょうど良いスパイスになっていて、ドラマを締める効果があったように思います。

コワモテ遠藤憲一さんの妖精としての空気感も、正直最初はちょっと違和感がありましたが、ひかりがおじさんに慣れるのと同じくらいのペースでこちらも何だか慣れて来て、エンケンさん自身も中盤以降はすんなりとみんなの中に溶け込んで楽しんでいる(皆があれこれ推理してるシーンで一瞬刑事の顔になったりw)のが伝わって来て、観ていてとても楽しかったです。(いつも飲み屋で頼むのがカシスオレンジってのも可愛らしいw)

主人公・一ノ瀬ひかり役の岡田結実さんは、そんな手練れ(てだれ)のメンバーの中に入って奮闘、とにかく元気で、表情が豊かで、すごくコメディエンヌ向き、という気がしました。 岡田さんのようなキャラクターは、若い女優さんでは貴重かもしれない。千葉ちゃんと安易に甘々な関係にならない、という脚本・演出の選択も、私としては大正解だったように思いました。

さて、泉プロデューサーを演じた田辺誠一さん。 いかにもギョウカイ人です的な軽さ、テキトーな上司(「踊る大捜査線」みたいな上層部3人組)に振り回される一方で千葉たちから突き上げくらう中間管理職的な辛さ、ひかりをさりげなくかばう優しさ、芯に持つ仕事への熱い想い、等々が、無理なく泉のキャラに収まって、しかも、コメディとしての全体の空気を壊さない。
『捜査会議はリビングで!』の晶も ドラマ全体のコメディとしての空気感に凄く馴染んでいて、そういう田辺さんを観るのが楽しかったのですが、泉Pは、軽さの中にある重みや深みが少しずつ表面に浮き出る仕掛けになっていて、観続けて行くことで、人間的なさまざまな色付けが加わり、どんどん魅力的になって行くところが(まぁファンだから贔屓目が入ってるかもしれないけど。苦笑)とても良かったです。

内容としては、メンバーそれぞれがメインになる回があって、どの回も面白かったですが、田辺ファンの私としては、4回と6回、特に千葉(城田)とのシーンが見ごたえあって楽しみました。
千葉がなぜ泉に対してタメ口なのか、言いたい放題出来るのか、その裏にある二人の信頼関係に、何だか凄く惹かれてしまった。
それから、「泉さんは千葉さんの気持ちが分かってない」と言うひかりに、「ちゃんと泉さんに謝った?」というお局様・馬場の一言も効いてました。この一言で、泉Pが裏でひかりのためにどれほど動いていたかがすごく良く分かって、馬場ちゃんさすがアシスタントプロデューサー、泉Pのことちゃんと分かってるなぁ、とちょっと感動。青木さやかさんがこの場面だけでなく全体的に良い味出してましたね。

コワモテおじさんの妖精が、ただ ひかりにだけ見えてるんじゃなくて、辛い時苦しい時 誰の前にも現れる、しかも、乗り越えた時には見えなくなっている、という存在だったのも良かったです。(もしかしたら‥ひょっとしたら‥私にも来てくれていたのかもしれない、なんて考えたりしてw)
アメリカに行かないか、と誘われて千葉が迷っていた時、突然おじさんが見えるようになって、いちいちビビりまくってたのが(普段めったに表情変えない男だけに)面白かった。

おじさんの正体は何だったのか――― 一歩を踏み出せなくてウジウジしている人の背中を押してくれる「近くにいる誰かの見えない手」だったのかもしれないですね。泉Pがひかりの頭をポンポンしてくれたように、千葉がひかりに手を差し伸べてくれたように…
ひかりの「おじさんになりたい」という一言。これ すごくいい台詞だな~、と思いました。ひかりも おじさんやみんなにしてもらったように、いつか誰かの背中を押す存在になって行く…そうやって誰かに背中を押されて、みんなつまづいたり転んだりしながら前に進んで行く…そんな未来が垣間見えたほっこりしたラストが心地良かったです。


それにしても…
泉P、後半は、出張やら やらせ疑惑の責任取って突然会社辞めるやら(すぐに復職してたけどw)唐突にいなくなっちゃってたなぁ。刑事7人(シーズン4)の時みたいに、中の人が忙しかった(学校やら坂の途中やらに出かけてて?)のかもしれないし、内容的に泉がいない方が話の展開がしやすいと思われたのかもしれないけど、何だか寂しかった。
特に皆が週刊誌のゴシップやフェイクに悩まされる7回は、私としては泉Pに居て欲しかった、泉がどう乗り切るのか(あるいはまったく乗り切れないのかw)観てみたかったです。それがちょっと残念でした。



『私のおじさん~WATAOJI~』
放送:2019年1月11日 毎週金曜 23:15- 全8回 テレビ朝日
脚本:岸本鮎佳 モラル   監督:竹園元 Yuki Saito 小松隆志
音楽:木村秀彬  エンディング:aiko「愛した日」
製作総指揮:三輪祐見子テレビ朝日、GP)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日) 本郷達也(MMJ) 布施等(MMJ
制作:MMJ(協力)  製作:テレビ朝日
出演:岡田結実 遠藤憲一 城田優 小手伸也 戸塚純貴 青木さやか 田辺誠一 他
公式サイト