『小公女セイラ』(第9話)感想

小公女セイラ』(第9話)感想
今回も、1時間、すごく充実していたように思います。
栗栖(クリス=要潤)の、セイラ(志田未来)へのサプライズプレゼント。
本当にいきなりだったし、第一、あれじゃ不法侵入だろっ!
って突っ込みたくなったけどw
その後の、来栖の生活の様子を見ると、万事おおらかで頓着しないので、
ちょっとした遊び心であのくらいのことはやっちゃうか、
と納得させられてしまう感じで、
要くんがまた、そういう栗栖を本当に楽しげに演じていて、
執事・柏原とのやりとり等も、観ていて何だかすごく微笑ましかったです。
(『フードファイト』の プリンスメロンくんと じい を思い出したw)

 

1人でも味方がいれば、1つでもいいことがあれば、
つらい生活にも耐えて行ける・・
セイラにとって、栗栖の行為は、素直に嬉しいことだったんでしょうね。
「君の知らない友達より」というカードを見て喜ぶセイラのとなりで、
カイト(林遣都)が、ちょっとだけやきもちを焼いたような、
そんな細かい描写も、本当に興味深かったですし、
セイラと一緒にいる時のカイトが、いつも本当にカイトそのもので、
私はもう、演じている遣都くんにベタ惚れですw。
(それにしても、カードに「あなたのファンより」って書いてなくて
良かったよw)

 

栗栖に簡単に侵入を許す学院のセキュリティって、どんな!?
と薄々感じていたところに、
タイミング良く、セキュリティ会社の人間が
「危ないんじゃないですか」と登場。
実は、学院の様子を探りに来た探偵なんですが、
そのあたりの設定にも、すんなりと納得させられてしまいました。

 

一方、参観日にコンプレックスをほじくり出された真里亜(小島藤子)は、
セイラに向かって「死ねばいいのに」とか、
「あなたが来る前は、平和な学院だったのに」とか、
非常にきつい言葉を浴びせます。

「あの人(セイラ)を認めると、自分を否定しなきゃならなくなる。
心のどこかで、あの人みたいになりたいと思ってるんでしょ」と、
かをり(忽那汐里)から痛いところを突かれて、ますます意固地に。

 

でもね、本当に、セイラが来る前は、この学院は平和だったんでしょうか。
うわべの平穏の裏側で、みんな、
どこかに嘘を抱えていたり、自分の心をごまかしていたり・・
そういう自分を変えたい、と思いながら一歩を踏み出せないでいたり・・
セイラの登場は、コンプレックス皆無で無邪気な彼女自身に
「心の痛み」の何たるかを知らしめるとともに、
千恵子(樋口可南子)を始めとする
この学院の人々のコンプレックスをあばき、
そのコンプレックスに直面させ、心を解放させ、自力で立ち直らせる、
そういう役割を担っているようにも思いました。


さて、亜蘭先生(田辺誠一)。
いや〜、これゆえに、だったんだなぁ、田辺誠一の起用は!
途中に回想シーンが挟まれていたとはいえ、
あれだけの内容を、すべて一人語りで押してしまう、という、
それを、十分な説得力で観る者に伝える、という、
それってすごいことなんじゃないのか、と、
田辺ファンの私は、ついつい肩入れしてしまうのを止められないw。

 

亜蘭(を演じている田辺さん)の面白いところは、
今現在の「感情」を、ほとんど役の上に載せていないところ
なんじゃないでしょうか。
今、目の前にいる初恋の人に、初恋の頃の心情のまま接しようとしている、
だから、現在の千恵子に対する大人としての告白には
なっていないんですよね。
だからこそ、「むかしむかしあるところに・・」
という、おとぎ話や童話のような空気感が生まれたんだと思う。

 

それを、物足りない、と思う人がいるかもしれない。
だけど私は、あそこで大人の亜蘭のナマの感情が
はっきりと出て来てしまったら、
あのシーンに、あんなに説得力を持たせることは
出来なかったんじゃないか、と思う。

 

恋というだけではない、愛というだけでもない、
亜蘭の、千恵子に対する しなやかな優しい感情が、
ふんわりと浮遊して、彼女にそっと寄り添い、彼女をすっぽりと包んで行く・・
だからこそ千恵子は、あの時、
無防備な心をさらして、泣くことが出来たのではないでしょうか。
たとえそれが、まだ、ほんの些細な心の開放でしかなかったとしても、
とても意味のあることだったには違いない。

 

千恵子の怒りをかった亜蘭は、学院を去ることになり、
セイラやカイトに「負けるな」というメッセージを残して、
一旦、退場となりましたが・・

 

何だかねぇ、亜蘭がセイラを抱きしめた後、
「この先は内緒にしておこうかな・・」と言った時に思ったんだけど、
彼は、ひょっとしたら、このドラマの中で、
作者(脚本家)の意図するところを代弁する「物語の語り部」であり、
また、読者(視聴者)の視線で物語全体を俯瞰(ふかん)する、
「高い位置からの眼」を持った存在でもあったのではないか、と。

 

そしてそのことが、このドラマが、「現代の童話(メルヘン)」・・
文字通り、母親が子供に読んで聞かせるような、
しかし実際には、大人こそが何らかの示唆や指標を受(さず)かるような、
深い「童話(メルヘン)」になっている、
ひとつの大きな要素になっているのではないか、という気がしました。

 

亜蘭を演じた田辺さん。
こういった、気持ちを相手に強くぶつけない、しなやかな役をやらせると、
お世辞でなく、天下一品だと思う。
亜蘭は、ある意味、ナマな人間じゃいけない、
例えるなら、妖精や魔法使いじゃないかと思うんだけど、
そういうとんでもない役を、齢40にしてやっちゃう田辺誠一が、
本当に面白くて、興味深くて、大好きで・・(どさくさまぎれの告白w)

 

今回は特に、
千恵子やセイラやカイトに対する表情が、
ひとつひとつものすごく繊細で、丁寧で、説得力があって、
しかも感情過多にならない、そのセーブの具合が、
絶妙だったように思いました。

 

と同時に、亜蘭の「甘さ」や「二枚目感」から逃げない覚悟を、
演じている田辺さんから感じられたことも、
過去さんざん逃げられて来た人間としてはwとても嬉しかったです。
ちょっと首を曲げる仕草とか、右手(指)を効果的に使うとか、
もう、いちいちミーハー心が反応してしまった。

 

そして樋口可南子さん。
彼女が演じる千恵子を観ていると、
あれほどのいじめキャラなのに、つい抱きしめてあげたくなってしまう、
千恵子の痛みを全部引き受けて演じている樋口さんごと。
でも、私にはそれが出来ないので、
亜蘭、どうか笑美子やセイラを抱きしめたように、
千恵子を抱きしめてやって、とお願いせずにはいられません。

 

ともあれ、自分を見てくれて、信じてくれて、愛してくれている人がいる、
と知ったことが、今後、千恵子をどう変えて行くのか?
セイラやカイトの運命は!?
そして、亜蘭は、はたして再登場するのか!?(爆)

 

脚本・岡田惠和さんが、この物語をどう収束させてくれるのか、
最終回を楽しみに待ちたいと思います。