ガラスの仮面・2(talk)

1998・4-6月放送 (テレビ朝日系)
★このトークは、あくまで翔と夢の主観・私見によるものです。

 夢:しかし、翔もあたしも、なんでこんなに田辺誠一さんに惹かれるようになったかなぁ。
 翔:きっかけが『ガラスの仮面』である事は間違いないんだけど、『ガラかめ・2』本放送中盤まで、私も夢も、「速水=竹野内豊」説を主張していたから。(笑)
 夢:あたしが特に、ね。 皆さんごめんなさい・・・ですね。
 翔:でも、私達にとっては、「最初に速水真澄ありき」だったし、田辺さんが速水真澄をやらなければ、正直、彼にこれほど興味を持たなかったのも確か。 だけど、後半、田辺さんに、どんどん惹(ひ)かれて行ったから。
 夢:翔は、「田辺VIDEO」まで作ってしまった。 とにかく、田辺さんが出てるシーンしか録画してないんだよね。 あれ、凄いよ、どこを再生しても、田辺さんが出て来る、金太郎飴みたいに。
 翔:金太郎飴、って・・・(笑)
 夢:(笑)
 翔:まあとにかく、「田辺VIDEO」を編集するのに、『ガラかめ・2』を繰り返し見たんだけど、そうすると、1回見ただけではあまり気にならなかった事が、すごく気になり始めた。
 夢:もしかして、ちょっと辛口コメント?
 翔:かなり辛口かもしれない。 
・・・田辺さんは、けして 芝居のうまい人じゃない・・と言ったら、身もふたもないんだけど、でも、マヤ役の安達祐実ちゃん・月影役の野際陽子さんといった芸達者相手に、苦戦しているな、と。 
   まぁ、田辺さんの演技以前に、速水真澄としてのセリフの内容だったり、着ている物、髪型・・・引っかかるものはいろいろあったんだけど、田辺さん本人の演じ方として、声が低く、聞き取りにくい場面があったのが気になったし、それよりも一番引っかかったのは、表情がきれいじゃない時があった、って事。
 夢:表情が?
 翔:「速水真澄は こういう顔 しないだろう」って、 納得いかないシーンが いくつかあった。 いつ、どういうシチュエーションで観ても、美しい、絵になる、という事が、何故出来ないんだろう・・・と。
 夢:いやいや、それは無理だよ。 田辺さんじゃなくても、どんな俳優さんだって、無理だと思う。
 翔:・・・そう・・なんだよね。 私も、田辺さんが出演している他の作品を観るようになって、実は違うのだ、と気づいた。 田辺さんばかりが悪いとは言えない、結局は、撮り方の問題、演出の問題でもあるなのかな、って。
 夢:そうだよ、田辺さんばかりを責めるのは、ちょっと筋違いな気がする。 そのあたりの翔の厳しい注文っていうのは、普通のファンとしての感覚とはちょっと違ってる気もするし。
 翔:そう・・ね、元来、うわーかっこいい、とか、キャーステキ、とか、余程(よほど)のことがない限り、素直に言える人間じゃないので。 興味を持てば持つほど、惹かれれば惹かれるほど、つい評論家口調になってしまう、というのが、私の最大の欠点だと自負していますが。(苦笑) 
夢:まあ、いいんじゃない? 無条件で田辺さん大好き、という人もいて、翔みたいに好きだけど厳しい見方する人もいて、同じ 田辺誠一ファン でも、いろんな考え方の人がいる、という事で。 ・・・で、結局、翔の言いたかったのは・・・
 翔:「速水真澄」みたいな役は、‘見た目’にうんと気を使って欲しい、あくまで、ステキ・キレイ・カッコイイ、に こだわって欲しい、という事、です。
 夢:田辺さんは 十分 かっこいいと思いますけど・・・
 翔:だから、演出・撮影・衣装 その他諸々のスタッフへのお願いです。
 夢:はい、分かりました。 秋の『完結編』では、より素敵な速水さんに会える事を 期待しましょう。
★    ★    ★
 夢:でも、辛口だけで終わってしまうのも、すごく心残りだな~。いいところも、たくさんあったでしょ? こうして田辺誠一オンリーのHPまで作ってしまうほど好きになったわけだし。(笑)
 翔:・・そうだね、それは確かに。(笑) まぁ、その辺のことは、リアルタイムの方でも話してるけど。
 夢:改めて、言いたいことは ない?
 翔:うーん・・やっぱり、速水英介(筒井康隆)の存在かな。
 夢:真澄さんのお義父さん?
 翔:彼が出てきたことで、速水真澄のトラウマ、というか、背負っているもの、というか、そういうものが、はっきりしたから。
 夢:うん。
 翔:マヤに対して、どうしても一歩を踏み出せない その切なさ・・・ 好きで好きで好きで、でも、どうしても打ち明けられない その切なさ・・・ というのは、彼が縛られているものによって生み出されていると思うんだよね。 その部分って、TVドラマで初めて出てきた、という気がするし、田辺さんだから、という気もする。
 夢:田辺さんだから?
 翔:そう。 原作の速水は、もっとずっと大人だ・・・という話はリアルタイムでもしたけれど、TVの速水は、そういうものを吹っ切れない、全部自分で引っかぶってる、そうならざるをえない弱さ、みたいなものがある。
 夢:うーん・・・
 翔:でも、これがもし、田辺さんじゃなかったら、そういう部分って、出てきただろうか。 
・・・たとえば、竹野内豊さん、豊川悦司さん、唐沢寿明さん、大沢たかおさん・・・等々、速水真澄を演じられそうな俳優さんって たくさんいると思うんだけど、義父を超えられない、踏みつけられない・・・ 真澄の力不足なんじゃなくて、憎みながらも愛したい、愛して欲しい、そう思っているから、義父を切り離せない、義父の言うことを反古(ほご)に出来ない・・・
   その辺の弱さ・・・うーん、弱さというのでもない、ある意味の「切ないまでの優しさ」って言えばいいか、そういう部分って、田辺さんだから滲(にじ)み出たんじゃないのかな、って。
 夢:切ないまでの優しさ・・・
 翔:そう。 「田辺さんにしか出来ない」とは言わないけど、ね。 田辺さんだから、より濃厚になったんじゃないか、と。 今にして思うと、田辺・真澄は、義父を憎んでばかりはいなかったんだろうな、って、ちょっと、そんなことも考えたりしたので。
 夢:・・・・う・・ん、そうだね、紫織サマ(佐伯伽耶)とのことなんかも、結局はお義父さんが絡(から)んでるから、進退窮(きわ)まってるわけだしね。 お義父さんへの葛藤(かっとう)がなければ、「大都芸能」をさらに成長させるぐらいのこと、速水さんの実力で何とかなりそうな気がするし、紫織サマとのことも、イヤならイヤと言えただろうし・・・
 翔:そうそう。 で、マヤに対しても、そういう部分がある。 原作よりも、もっとずっと「対等」という気がする。 足長おじさんと少女、というより、TVの速水は、もっと「少年」の感覚に近い。 マヤへの感情って、ほとんど「初々しい」と言ってもいいくらいで、酸(す)いも甘いも噛み分けた成熟した大人が、歳の離れた少女への気持ちに戸惑っている、という感じは全然しない。
 夢:・・・うーん、確かにそうかもしれない。 それに、原作の速水さんって、紫織サマに対して、誠実な部分ってあると思うんだけど、田辺さんの速水は、明らかに、政略のためにしぶしぶ付き合ってます、って感じがするんだけど。(笑)
 翔:(笑) 結局、マヤのことを考えて、心ここにあらず状態になっている、ということなのかな。 第1部の速水さんは、マヤのことが気になっている、もしかしたら好きになりつつあるのかも、と、自分でも確信が持てなかったと思うんだけど、第2部では、完璧に「好き」から始まっているからね。
 夢:田辺・真澄は、ごまかしがきかない。 あれじゃ紫織サマも、やきもきするはずだ。(笑)
 翔:不器用。(笑)
 夢:(笑)確かに、原作の速水じゃないよね。
 翔:でも、それって、たぶん田辺さんの実年齢の問題じゃないんだよ。 たとえあと5年経っても、原作の速水に近づくことはない。 「持っているもの」が違う、という気がする。
 夢:うんうん。
 翔:初めての恋に震える少年のような、不器用で初々しいマヤへの気持ち・・・ どうしても捨てられない、憎み愛する義父への想い・・・ 
  副社長としての仕事は完璧にこなしながら、愛する者たちへ、その素直な感情を伝えられない、大事な一歩を踏み出せない、という、どうしようもない弱さ、切なさ。 でもそれは、限りない優しさゆえの躊躇(ちゅうちょ)でもある、という・・・
   その辺が、TV版速水の魅力でもあり、一番、観ている者のハートをキュンとさせる部分でもあるんだよね。 そしてそれは、田辺さんだから、そういう速水になったんじゃないか、とも思う。
 夢:うーん、なるほどねぇ、田辺・真澄は切ないなぁ・・・ こういう話をしてると、またビデオを観たくなる。(笑)
 翔:そうだね。(笑) 「切なさ」というのは、田辺さんが演じる役の多くに共通するキーポイントなのかもしれないよね。 そしてたぶん、そういう田辺さんだから、私は、彼を追いかけたい、彼について語りたい、ってそう思うようになったんだと思う。
 夢:・・・よかった、いきなり辛口の感想から始まったので、おいおいと思ったけど、ちゃんと翔が田辺好きに戻ってくれて。(笑)
 翔:(笑)
★    ★    ★
 夢:ところで、「私のイチ押し」だけど、翔は、どの場面を選ぶ?
 翔:初デート。一緒に並んでアンナカレーニナを観たところから、交差点まで。 「切なさ」の極みだった。 あと、プラネタリウムで、速水とマヤが出逢うところ。 原作にはない、TVならではのシーンで、とても好きだったので。
 夢:あたしは、やっぱり、踏切での告白シーンかな。「きみが・・きみが・・・好きだ!・・・・好きだ・・・」の、2番目の「好きだ」がね。
 翔:夢は、一時、あの「好きだ」に嵌(は)まっていたね。(笑) 私もあのシーンはすごく好きだった。
 夢:たぶんあれが、あたしが 完璧に田辺誠一ファンになった、記念のシーン。 あと、キスしようとして、諦めるシーンも好きだった。「速水さん、切な過ぎるよぉ!」と思って、やきもきしてた。
 翔:TVの速水さんって、本当にマヤの事を一生懸命考えてくれていたよね、観ているこちらの胸が苦しくなるくらいに。


ガラスの仮面・2 (リアルタイムトーク 

これから読んでいただくトークは、『ガラスの仮面・2』(第7話~最終話)のリアルタイムの感想 を、Web用にまとめたものです。以下の対談が、このホームページを開く原点となっている、というのが、翔と夢・二人の共通の想いでもありますので、普段以上に粗削りな内容ではありますが、掲載させていただきました。

第7話
  夢:翔は、原作の漫画の方も詳しいんだけど、TVと比べてどう? 第1部の頃は、あまり熱心じゃなかった気がするけど。
  翔:うーん、原作のファンではあったけど、他の、漫画をドラマ化して失敗したのを、何度も見ていたからね。今回も、そうなっちゃうんじゃないかと・・・
  夢:で、どうだった?
  翔:どうしても違和感はあった。自分なりのイメージがあったし。 だけど、安達祐実ちゃんのマヤに関しては、最初からすんなり入っていけた。
  夢:うん。
  翔:祐実ちゃんが特にすごいと思ったのは、母親が死んだ時、月影と脚本を読み合ったところ。感情移入がうまいんだなぁ、と。 祐実ちゃんだから名場面になった、という気がする。
  夢:あたしも、あのシーンは泣けたな~天才子役の面目躍如(めんもくやくじょ)って思った。
  翔:それと、たぶん1番大切なものを彼女は持っていた。
  夢:1番大切なもの?
  翔:「北島マヤ」と言う役の「旬」。
  夢:しゅん?
  翔:そう。‘今’の北島マヤは‘今’の安達祐実だから出来る。 5年前の彼女でも、5年後の彼女でも出来ない、・・そういう気がする。
  夢:そうかぁ・・・・
★    ★    ★
  夢:まぁ、第1部についてはいろいろとご不満もございましょうが、第2部についてはどう?
  翔:面白いよ。 
  夢:まあ、態度がコロッと・・・(笑)
  翔:だって祐実ちゃんがさらにうまくなったから。だから劇中劇もずっと面白くなったし。
  夢:第1話のロボットのパントマイム!
  翔:あれはびっくりした。 こりゃ第1部とは違うぞ、と思わされた。表情も、すごく豊かになっていて・・・
  さっき「旬」の話をしたけれど、高校生のマヤの役を高校生の祐実ちゃんが演(や)る、成長していく女優の役を伸び盛りの女優 が演じる、という面白さが、うまい具合に出てきた、って気がする。
  夢:マヤの成長=安達祐実の成長という事?
  翔:その両方の成長がいっぺんに見られる、ということです。
  夢:第2部は、脚本も良くなったと思うんだけど。
  翔:第1部では、マヤと母親の繋がりにかなりの時間をさいたから、他の登場人物が描き切れなかったって気はするね。  だけど、そのおかげで「母親を死に追いやった事を悔やんで、どうしてもマヤに手が出せない速水真澄」っていうシチュエーションが、より鮮明になった、とも言えるけど。
  夢:そう!速水真澄。 彼も魅力的なキャラになったと思いません?
  翔:やっと話がそこに来ましたね。(笑)
・・・・第1部では、明らかに北島 マヤの添え物だった速水(田辺誠一)だけど、第2部ではマヤと同等と言っていいほどの役になっている・・・って事は、 作り手も、彼に魅力を感じているんだと思う。
  義父・速水 英介(筒井康隆)の登場で、彼の過去や「紅天女」とのかかわりまで描けるとすれば、ますます速水真澄は、物語の重要な部分を占めてくるという気がする。
  夢:うんうん。
  翔:今、すごくギリギリの状態じゃない?
  夢:え?
  翔:立場上、マヤを追い詰めなければいけなくて・・でも、彼女に対する特別な感情、自分の中で勝手にどんどん ふくれ上がって来ている 「恋」という感情、に戸惑っている。 一方で、どうやら自分の婚約者が マヤに危害を及ぼそうとしているらしい って事も気づき始めた。 
  自分の気持ちを 打ち明けたい、けれど、母親を死に追いやった自分を、マヤは許すまい。 もし、自分が「紫のバラの人」だと告白したら、彼女は 受け入れてくれるかもしれない。しかし 拒絶されたら、自分と彼女とを繋ぐ唯一 の糸を切ってしまう事になる。
  マヤを どんどん好きになっていく自分、何度も想いを告白しそうになる自分、でも、どうしても打ち明けられない自分・・・ そういう切羽詰った感情、ギリギリの想いっていうのは、原作の速水真澄にはないんです。 私がTVドラマの速水が好きなのは、そこのところなんだよね。
  夢:それって、とても良く分かる気がする。
  翔:原作の速水は、もっと大人で分別がある。 だから、TVの速水のように、暴走一歩手前で踏みとどまっている、と言うより、年下の少女に対する自分の感情に いまだに戸惑ってる、って感じがする。 どっちがいいかっていうのは、好みの問題だけど・・・・
  夢:あたしもTVの速水真澄っていいと思うよ、なんか一生懸命で。でも・・・・
  翔:夢はキャスティングについて一家言あるのよね。
  夢:あたしの中では、「速水真澄」イコール「竹野内豊」だったんです。 なんか、バリバリ仕事をこなす青年実業家って、ピッタリだと思わない?
  翔:私も、彼の事は、決して嫌いじゃないです。(笑)  「仕事」の似合う若い俳優さんって少ないじゃない? 彼が速水真澄を演ったらどんなだったろう、って、正直私も思ったよ。
  夢:うんうん。
  翔:まあ、田辺誠一さんへの擁護(ようご)も含め、キャスティングについては、また後の機会に取り上げていきたいと思います。


第8話
 夢:「お母さん」と「お兄ちゃん」のセリフの違いこそあれ、速水はマヤにキス出来ない、って翔が言ってたのは当たってたね。
 翔:うん。
 夢:でも、あそこまでいったらキスぐらいしちゃえば、と思うけど・・・
 翔:そこが速水のいいところでしょ。それに、あのシーン見てて、第3部もあるって確信した。
 夢:何で?
 翔:夢も言ってたじゃない、キスシーンは第3部まで取っておいて欲しいって。
 夢:確かにそんなことも言ったけど、でも今後、第2部の中でそういうシーンが・・・
 翔:ない。だって、このドラマは、速水とマヤの想いがすれ違ってるところがいいんだから。
 夢:うーん、そうか・・・・
★    ★    ★     
 夢:それにしても、「ふたりの王女」が30分で終わっちゃったのには驚いた!
 翔:原作では何百ページもあったのに。 でも、劇中劇だからあんなものでしょう、ダイジェストには、なってたし。
 夢:マヤも良かった?
 翔:安達祐実ちゃんは、確実にうまくなっている。 ただ、劇中劇という点では、次の「忘れられた荒野」が、最大の山だからね。
 夢:それにしても、黒沼龍三を 羽場裕一さんがやるってのもびっくりしたよね。 
 翔:原作とはイメージが違うけど、それはそれでいい、って感じもした、第8話を見た限りでは。 原作に、速水と黒沼が屋台で顔を合わせるシーンがあるんだけど、ぜひ、田辺・羽場で観てみたい。
 ★    ★    ★  
 夢:第8話を見てて、素朴な疑問を持ったんだけど・・・
 翔:なに?
 夢:速水が小切手を渡して、拓矢(可相我聞)が金額を書くシーン、どうして1億円だったの。
 翔:あれは、拓矢が速水の気持ちを確かめたんだと思う。 自分がマヤから離れるための金額じゃない、速水のマヤに対する愛情が、いったいどれくらいのものなのか、途方もない金額を突きつけて、確かめようとした。
 夢:そうして、速水はそれを受け入れた・・・
 翔:そう、拓矢のマヤに対する‘想い’も一緒にね。 だから・・・
 夢:「マヤを頼む」かぁ。
 翔:拓矢は、速水のマヤに対する気持ちを知ってるから、彼になら妹を託せると思ったんだよ、きっと。
 夢:う~ん、1億円という金額には、そういう深い意味が込められていたんだ。 それにしても、これから拓矢はどうなってしまうんだろ。
 翔:幸せにはなれないよね、きっと。
 夢:紫織サマ(佐伯伽耶)にいたぶられて?
 翔:紫織さまを、意地悪キャラとしてここまで引っ張ってくるとは思わなかった。
 夢:確か、原作では、もっとおとなしめのキャラだったよね。
 翔:「深窓の令嬢」です。鷹宮グループの総帥の孫娘というところは TVと同じだけど、性格は全然違う。 彼女がとても「いいひと」なので、速水も 見捨てられないってところがある。 紫織のまっすぐな恋情に応えてあげるために、マヤへの想いを封印しようとまでするんだから。
   その辺の速水の葛藤というのは、原作ならでは、で、やはり あちら(原作)の彼は大人なんだ、と思う。
 夢:自分の感情を全部閉じ込める事が出来るって感じ・・・
 翔:と言うより、感情を出さないように育ってきたんだよね。 その辺は、彼の過去、特に、義父との係わりが関係してくるんだけど。
 夢:原作の速水の少年時代って、完璧に、ひとつのドラマになってたよね。
 翔:TVでは、その辺まで踏み込んでくれるのかどうか・・・ 「紅天女」の打掛けに絡んで、母親のエピソードぐらいは出るでしょうけど。
★    ★    ★
 夢:キャスティングの話をしましょう。
 翔:今回は月影千草と速水英介で。
 夢:し・渋い・・・(笑)
 翔:そう言うけど、月影千草のキャスティングが失敗してたら、TVの『ガラスの仮面』そのものが失敗してたと思わない?
 夢:う~ん、確かに・・・
 翔:野際陽子さんが、真面目にあの役を演ってくれたから、良かったんだと思う。 よくあるじゃない、漫画をドラマ化した時に、見てる方が妙に照れくさくなってしまう、って事が。 野際さんの月影千草は、本当にギリギリのところで役づくりをしていて、好感が持てました。
 夢:とは言え、マヤにテニスボールぶつけるところなんか、結構笑っちゃいましたが・・
 翔:あれは、野際さんのせいじゃなくて、脚本と演出の問題。
 夢:それはそうだけどね。 ・・・じゃぁ、速水英介役の筒井康隆さんについては?
 翔:プロデューサーって、面白そうな仕事だな、って思った。(笑)
 夢:え?
 翔:普通なら予想もしない人をキャスティング出来るから。
 夢:ああ、なるほど!
 翔:筒井康隆さんを速水英介に振り当てるなんて、普通、考えつかないもの。
 夢:うーん、そうかぁ・・・
 翔:どんな物語をドラマにするか、キャスティングをどうするか、なんて考えるの、楽しそう。
 夢:そうだね、その過程を覗いてみたい気もするね。
.

第9話
 夢:我聞くーん! そんな簡単に死なないでくれーっ!
 翔:いやぁ、その辺の漫画よりずっと漫画っぽい展開でしたね。野島伸司のドラマのようだ。(笑)
 夢:って、笑わないで! あたしはマジに怒ってるんですから! だいたい、マヤの兄って言ったって、本当にしどころのない、ただ紫織サマに利用されるだけに登場したようなもんじゃない。 これじゃ、我聞くんを使った意味がない!
 翔:まあまあ、お怒りはごもっともですが、犬をかばって死ぬ、というのには深い意味が・・・ 拓矢が、自殺でもない、紫織さまが放った刺客(!)でもない、事故で死ぬ、ってことは、紫織さまが、マヤや速水に心底憎まれる程のワルにならずにすむ、ってことです。
 夢:紫織サマは、もうすっかりワルですっ!
 翔:うーん、そうなんだけどねぇ・・・
 夢:この期に及んで、あんなストーカー女の弁護をするのか、翔は!
 翔:「たとえ あなたに好きな人がいても、私はあなたが好きだから、あなたと結婚します」 っていう 彼女のセリフを聞いてて思ったんだけど、最初は、速水と彼女って、うまくいってたんだよね、たとえ速水の方に愛情がなかったとしても。
   ところが、北島マヤという ちっぽけな少女が現れたと思ったら、あっという間に 速水の心を独占するようになる・・ それって、紫織からすれば、かなり屈辱的なこと。 なんだか、ちょっとかわいそうだなって。 ストーカー状態になるっていうのは、それだけ速水を愛しているからだろうし・・・・
 夢:そう~? あたしは、どうひっくり返ったって、紫織サマに同情できない。
 翔:私としては、彼女が、憎らしいだけでなく「哀れ」と思われるようになったら、キャラとして成功だと思う。 そして、速水が、彼女の手を離しきれなくなって、マヤへの想いを断ち切ろうとする。
 夢:え~っ!? だって、今、速水さんは、「マヤ、好きだ 好きだ 好きだ-っ!でも言えないっ!」 っていう切羽詰まった状況だよ。 到底マヤを諦め切れるとは思えない・・・
 翔:諦め切れないよ、もちろん。 ただ、マヤに降りかかる災難が、紫織の、速水に対する「愛情」から生まれたものだったと知ったら、彼はどうするんだろう。 会社の為じゃない、マヤの為に、マヤを紫織から守る為に、紫織との結婚を決意する・・ という筋書きはどう?
 夢:・・・う~~・・そうなったら、みんな不幸になっちゃうよ~。 
★    ★    ★
 夢:ところで、速水がマヤをデートに誘うシーン、入ってて良かったね。
 翔:ずーっと思ってた事なんだけど、プロデュースも脚本も女性って事は、ファンがどういうシーンを望んでいるかが良く分かるんじゃないか、って気がする、特に少女漫画が原作の場合は。
 夢:確かにそうかもしれないけど、あたし、時々、速水さんをどつきたくなる。
 翔:何で?
 夢:だって、例えば今回、マヤをデートに誘うのだって、速水にすれば、かなりの覚悟をしての事だと思うんだよね。 自分の想いを打ち明けようと決心して、マヤに芝居の切符を送ったんでしょう? なのに、何故告白しないの?
  マヤの母親の死に責任を感じているなら、「その分、俺が幸せにしてやる」って思うようにならなきゃ、マヤとの間は、これ以上進展しないでしょうに。 いつまでも「俺は影でいるしかない」って引いてばかりじゃ・・・
 翔:そうだね、TVの場合は、かなり早い段階から、速水のマヤに対する想いが「愛情」に変わってるから、じれったい、というのはあるよね。
  だけど、直接的にではないにしろ、「母親を死に追いやった」というのは、実は、義父から、彼自身が負わされた最大の傷でもあるんだよね。 その事で、彼が、どれほど義父を憎み、恨んだか。 自分が受けたと同じ深い傷を、速水はマヤに負わせてしまった・・・ あれほど憎んだ義父と同じ事を、彼はマヤにしてしまった。
  マヤへの愛は、日増しに、彼の中で大きくなっていく。 けれど、彼女の顔を間近に見るたびに、少年時代の自分、母親の死に深い傷を受けた自分の姿をオーバーラップさせてしまうとしたら・・・ 私は、速水が、何故 躊躇(ちゅうちょ)するのか、ストレートに告白出来ないのは何故なのか、原因はその辺にあると思う。
 夢:・・・そうか・・マヤと自分、自分とお義父さんが、二重写しになってしまう訳なんだね。
 翔:そう。 心に同じ傷を負っている者として、マヤを一番理解し、愛している。 けれど、その傷を負わせた者として、どうしても、マヤに想いを打ち明ける事を、自分自身に許すことが出来ない。 それを許せば、義父をも許してしまうことになるって考えてる・・・ってのは、深読みし過ぎでしょうか?
 夢:・・・なんか、辛いですねぇ、速水さん・・・・ 「紫織と政略結婚しなくたって、大都芸能は俺がでっかくしてみせる!それで、マヤと結婚して、彼女を幸せにしてやるんだっ!」って言わせてあげたい。
★    ★    ★
 夢:恒例のキャスティングに行きましょう。 姫川歌子役のかとうかずこさんって、イメージ近かった。
 翔:うん、華やかな感じでね。 娘の亜弓役の松本恵さんは、目鼻立ちは華やかなんだけど、セリフの歯切れが悪いのが残念。
 夢:あと、あの衣装、何とかなりません?
 翔:いくら女優でもね・・・
 夢:紫織の服も嫌い! 姫川邸も!
 翔:・・続々出て来るね。(笑)
 夢:ついでに言えば、月影さんは心電図止まったって復活してくるのに、お兄ちゃんはなんであんなにあっさり死んじゃうの!?
 翔:また話がそこに・・・・
 夢:可相我聞クン、好きなんです。
 翔:でも、今回は暗かったよね。
 夢:うん。もうちょっと笑顔が見たかった! あの笑顔が素敵なのに・・・・
.

第10話
 翔:あと2回しかないんだよね・・・
 夢:ん?
 翔:いや、これから『忘れられた荒野』が終わるまでの間に、入れてほしいエピソードがいくつもあるのに、あと2回で まとまりきるのかなぁと・・・
 夢:確か、第2部って、『忘れられた荒野』のジェーン役で賞をとったマヤが、やっと姫川 亜弓と同じ「紅天女」候補としてスタートラインに立つところで終わり、だったよね。
 翔:予定ではね。 でも、今回、マヤの山行きが思ったより長かったので・・・
 夢:まさか、姫川 亜弓まで山に行くとは思わなかった。
 翔:マヤが危険な目に遭ったのを知りながら、そのまま亜弓が立ち去ろうとする、というのは、原作では、もっとずっと先の話だったからね。
 夢:だけど、ちょっと無理あり過ぎの展開じゃない? 後から追いかけて行った亜弓が、山の中で偶然マヤに出会えるなんて、何万分の一もない確率だよ。
 翔:それもあるけど、私としては、この段階で亜弓がこれほど劣等感にさいなまれてしまう、という展開の方に驚かされた。 亜弓については、原作ほど細かな描写がないので、第2部では、「マヤさん、私は、あなたと『紅天女』を競える日を待っているわ」って感じで終わるのかと思った。
 夢:姫川亜弓も、速水真澄 同様、ドラマがあるよね、原作には。 亜弓びいきの翔としては、TVの方も、もっと彼女を出して欲しいって思う?
 翔:いや、いいです、これ以上、速水さんの出番を減らして欲しくないですから。(笑)
  ただ、彼女の「劣等感」というのが、私はとっても好きなので。 端(はた)から見れば、美貌も才能もすべて持ち合わせ、何不自由なく育った彼女が、実は、思い悩んだり、苦しんだりしながら生きている・・・ 亜弓のような、どこから見ても非の打ちどころのない、完璧に見える人間の、唯一の弱み、すごく人間くさい部分、というのに、とても惹かれます。
★    ★    ★
 夢:お兄さんが死んで、演技が出来なくなったマヤを、速水さんがプラネタリウムに誘うシーンは、今回のみどころだったと思うんだけど。
 翔:速水さんの、ね。
 夢:はい。
 翔:でも私は、彼に「マヤ、無理するな」なんて、言って欲しくなかった。 マヤに対してだけは、ああいう優しさが出せない、っていうのが、速水の速水らしいところじゃない?
 夢:うーん・・・・
 翔:「泣きたい時は、泣いていいんだぞ」というところまでは許せる。自分だってそうだった、だからおまえも・・・ってことだから。 でも、それ以上の優しさって、そぐわない気がする。
 夢:紫織さまには、メチャ優しいけどね。
 翔:それは、「大都芸能副社長・速水真澄」という鎧(よろい)を身にまとった時の優しさ。 素(す)の彼は、自分の中のそういう柔らかい部分を表に出してしまう事に、抵抗があるんじゃないかって思うんだけど・・・ マヤに対しては、あんまり「態度」で優しくしないで欲しい、って言うか、・・・うーん、うまく言えないけど・・・・
★    ★    ★
 夢:そう言えば、予告編では、紫織さまが手首を切るシーンがあったよね。 彼女が死ぬなんてことは・・・
 翔:ないでしょう。 でも、それで、速水は 抜き差しならない状態に追い込まれてしまうでしょうね。
 夢:と言うと?
 翔:速水が婚約解消を切り出した結果として、紫織は自殺未遂するわけだから、速水の性格からして、放っておけなくなってしまうでしょう。
 夢:原作の速水さんだったら確かにそうかもしれないけど、TVの彼は純粋で一本気なところがあるから、いったん婚約解消を口にしたら、もう、それは変えないっていうか、変えてほしくないなぁ。
 翔:私は、来週、一気に「結婚」の具体的な話が出て来てしまう気がする。
 夢:えーっ!? それって、相手は・・・
 翔:もちろん紫織さま。 今の段階では、速水は、マヤの「影」になる決心をしている。 「影」ならば、結婚していても問題ないわけでしょ?
 夢:結婚していても問題ない、って、それじゃあんまり速水さんにもマヤにも残酷過ぎる!
 翔:紫織にもね。
 夢:じゃあ、速水さんとマヤは、「不倫」になってしまうの?
 翔:いやいや、結婚話が出るだけで、実際に結婚まで行き着くわけじゃなし、第一、これは私の勝手な想像だから。 ・・・どっちにしても、自殺未遂の後の紫織の言動によって、いろんなことが決まってくるような気がするね。
★    ★    ★
 夢:今回取り上げる人は?
 翔:個人的に好きな水城冴子と、桜小路優。
 夢:桜小路くんか。
 翔:彼も、今のままじゃ「お友達」以上に発展しなくて、かわいそう。 願わくば、第3部(があるのなら)では、マヤをめぐって、速水と対(たい)で火花を散らしてほしいと思う。
 夢:小橋 賢児くん、魅力的になったよね。
 翔:もともとの「甘さ」に、青年らしさが加わってきた。
 夢:速水の秘書の水城冴子、戸川京子さんが演ってますが。
 翔:原作の時から好きな役。 戸川さんは、最初イメージが違うかなと思ったけど、速水さんのことをいつも心配してくれてて、いい感じだなぁと・・・ あと、今回見てて、羽場さんがすごくいいと思った。
 夢:黒沼龍三か。
 翔:彼も、原作とはイメージが違うんだけど、それがまた新鮮で面白い。 何より、セリフがはっきりしてるのが良い。 こうなると、羽場・安達・小橋トリオで、どんな『紅天女』を作って行くのか、ぜひ見てみたい気がします。
.    

第11話
 夢:・・・・・・・・
 翔:・・・・・・・・
 夢:って、2人で無口になってちゃ、話が進みませんって。
 翔:な~んか、ボーッとしちゃって・・・
 夢:それにしても、まさに電光石火の急展開だったね。
 翔:う~ん、今回は、一本取られたって気がする。 スタッフ・キャスト含め、みんなから、心地良い裏切られ方をした、と言えばいいのか・・・
 夢:と言うと?
 翔:特に思ったのは「脚本」なんだけど、前にも言ったけど、原作のどの部分を見せたいのか、原作のファンは、どのシーンを見たがっているのか、っていうのが、とても良く分かってるんだなぁと思う。 同時に、TVドラマとして『ガラスの仮面』をみている視聴者へのサービスも忘れていない。
 夢:視聴者へのサービス?
 翔:よりドラマチックに、テンポ良くストーリーを展開させるってこと。 例えば、TVの速水真澄(田辺誠一)は、原作とは随分イメージが違うよね。 キャスティングの問題もあるんだろうけれど、原作ほど「大人」ではない。
夢:うん。
翔:原作の速水は、マヤへの想いを、他人に気づかれないように、胸の中でゆっくりと発酵させている。ふとした瞬間に、想いがあふれそうになるけれど、言葉には決して表さない。 
  だけど、TVの速水は違う。 私、前に、速水が マヤ(安達祐実)に告白するのを 躊躇(ちゅうちょ)しているのは、義父(筒井康隆)との葛藤があるからだ って言ったけど、もう、とにかく、マヤへの想いが目一杯ふくらんで、ついに、お義父さんに対して、「あなたが母さんを殺した。もう、あなたの言いなりにはならない!」 とまで言ってしまう。 そこで、速水を縛り付けていた「枷(かせ)」がはずれ、ついに・・・
 夢:今夜のラストシーンになるわけね。
 翔:原作のファンからすれば、そこまで行っちゃっていいの?という思いが強い。 だって、原作の速水は、いまだに、面と向かって告白していないし、それどころか、やっと、マヤも自分のことを好きなんじゃないか って気づき始めたところなんだから。
 夢:う~ん、でも、TVで それだけていねいに 速水さんの心理を追ってたら、まどろっこしくて 嫌になっちゃうよね、ただでさえ、なかなか告白しなくて イライラさせられたのに。
 翔:だから、そこが、本(マンガ)を読むのと TVを見るのとの 違いなんだと思う。
・・・私は、原作の速水が とても好きだった。 マヤと出会ったことで、彼の心の氷が ゆっくりと溶かされて行くその過程も、一方で、仕事に 辣腕(らつわん)をふるう 青年実業家であり、紫織に対して 甘い言葉さえささやくことの出来る大人である、という部分も全部含めて。
  だけど、その「速水真澄」を、TVという枠の中で作り直そうとしたら、どうしたって、切り取ったり、付け加えたりしなければならない部分が 出て来る。 それは、速水ばかりじゃなくて、他のキャストやストーリーそのものにも言える事なんだけど・・・
 夢:そりゃそうだよ、全部が全部、原作と同じには出来っこないんだから。
 翔:じゃぁいったい、原作のどの部分をどう生かし、どう捨てるか。 なおかつ、TVのキャラクターとして、どう変化させていくのか。
  紫織(佐伯伽耶)が 悪役キャラになってしまったり、速水のイメージが変わったり、原作ファンからすれば、納得いかない部分も、もちろんたくさんある。 だけど、だからこそ、TVならではの名場面も生まれる。 特に今回、原作にはなくて、ああ、このシーンが マンガになったら どんな感じだろう、と思った場面があって、これは本当に、今まで数多く 映像化・舞台化された マンガ作品の中で、滅多に 味わうことの出来ない感覚だった。
 夢:それって、ラストの踏切のシーン?
 翔:それもだけど、その前の、プラネタリウムの場面が特に。
  マヤは、速水の仕打ちが、じつは 彼女の為にしてくれた事かもしれないと気づき、とまどい、一方、速水は、義父に「あなたの言いなりにはならない!」と 胸の内を吐き出して、気持ちはもうグチャグチャ。 そんな状態の二人が、プラネタリウムで偶然出会うんだけど、その出会い方が すごく自然で、いいんだよね。
   通路を走っていく子供を追う視線が合って、お互いの存在に気づき、驚くふたり。
   「座るか?」
   速水の隣に 腰をおろすマヤ。
   「きょうは、やけに素直だな」
   「・・・何か 嫌な事でもあったんですか?」
   「ん?」
   「子供の頃 お母さんが亡くなってから、よくここに来たんでしょ」
   「ああ。 君はどうなんだ、何か嫌な事でもあったのか?」
   「いえ。 あたしは・・あたしはただ・・・・」
   「君は、俺の事を嫌いじゃなかったのか」
   「・・嫌いです」
   「じゃぁ、なぜ隣にいる?」
   「慣れましたから」
   「・・・・しかし、またこうやって、君と星を見れるとは思っていなかったな。 不思議だ、君とこうやっていると落ち着く。いろんな煩(わずら)わしい事も、何故か気にならなくなってくる」
   「どうしてですか? ・・・『サンドラ』のパーティでの事、あれ、あたしの為だったんですか? やっぱり、そうなんですか」
   「もしそうだとしたら、どうする」
   「じゃぁ・・・・・」
   マヤの手を握り、立ち上がる速水。
   「マヤ、俺はずっと・・ずっと・・・・」
   満天の星の下での告白・・・・
 夢:そこに、非情の携帯ベルが!(笑)
 翔:どうしていつも、いいとこで携帯が鳴るんだっ!(笑)
 夢:誰が掛けてるの?
 翔:たぶん水城秘書(戸川京子)。
 夢:あの人、「信号は、いつまでも赤ではありませんわ」なんて言っときながら、一番邪魔してるんじゃない?(笑)
 翔:速水さんには、今後、携帯を持たないで、と言いたい。(笑)
★    ★    ★
 夢:ラストシーンの話をしましょ。
 翔:夢、気に入ってるんだよね。
 夢:うん! 速水さんに早く告白してほしかったから。 今まで、イライラさせられっぱなしで、見ているのが辛かった。
 翔:原作のファンとしては、たとえ、TVの速水は漫画とは別物だとしても、「速水真澄」である以上、簡単に「好きだ」と言って欲しくなかったという思いも、正直言ってありますが・・・
 夢:簡単じゃないでしょうが! 何度も何度も告白しようとして、出来なくて、いろんな葛藤(かっとう)を乗り越えて、やっと言えたんだから。
 翔:う-ん、このこだわりを、どう言ったら分かってもらえるのか・・・
 夢:でも、とってもいいシーンだったでしょ? それは翔も認めるよね?
 翔:まあ、ね。TVの速水さんは、早くから、マヤのことが 心配で心配で、好きで好きで、でも、マヤの母親の事とかあって、どうしても 打ち明けられなくて、マヤの拒絶に合うたびに、唇かんで、じっと耐えて・・・って感じだったから、思い余って告白しちゃったのも無理はない、とは思うけれどね。
 夢:速水さん、踏切での告白だったけど、どう思った?
 翔:マンガの速水だったら、ああいうところで告白しないよなぁ・・・・
 夢:またまたぁ。
 翔:はいはい(苦笑)、話を戻そう。
  設定がいいよね。 速水とマヤの間は赤信号のまま、という伏線があるからね。 速水が「好きだ!」と叫んだ後、電車がガァーッと通り過ぎて、二人の間の遮断機が、ゆっくりと上がって行くじゃない。 「渡っていいんだよ」って、速水が言われてる感じがした。
 夢:誰に?
 翔:・・・・誰かに。
 夢:・・・ふっふっふっ
 翔:ちょっと、どうしたの、変な笑い方して。
 夢:何だかんだ言っても、翔、TVの速水さん好きなんだよね。
 翔:そうだよ、最初から言ってるじゃない。
 夢:なぁんかさぁ、「好きだ」なんて言って欲しくなかった、とか言うから。
 翔:それは、原作の方の「速水真澄」ファンとして、どうしても言っておきたかった事だから。 基本的に、速水さん演ってる田辺誠一さんも好きになっちゃったしね、夢には悪いけど。(笑)
 夢:あたしもあたしも、実は・・・ 踏切のところで、速水さんが「マヤ、君が・・君が・・・・好きだ!」って言うじゃない。で、電車が来て、もう一度「好きだ」ってつぶやくでしょ? その時の田辺さんの顔が、すごく良かったの。 な~んか、いいなぁって・・・・
 翔:あれ、竹野内豊サンは、どうなっちゃったの?
 夢:いや、もちろん、速水イコール竹野内がベストと思ってはいるけどね・・・・
 翔:いまだに?
 夢:・・・・・うーーん・・・・(笑)
★    ★    ★
 夢:田辺さんの話が出たところで、キャスティングの話に行きましょうか?
 翔:ラストも近いことだし、北島マヤと速水真澄で。
 夢:はい。
 翔:北島マヤ安達祐実ちゃんは、ここのところ本当に凄いです。 表情が、微妙なニュアンスで少しずつ変わるから、彼女の表情を見ているだけで飽きない。
 夢:うん。
 翔:言い回しや、間の取り方もうまい。 もともと感情移入は上手だったし、セリフがはっきりしてるのもいい。
 夢:珍しいね、翔が、そこまで褒(ほ)めちぎるって。
 翔:私は今、「恐るべし安達祐実!」って気分です。(笑)
 夢:なるほど。(笑) じゃあ、「速水真澄」の田辺誠一さんについては?
 翔:速水真澄みたいに、ファンの思い入れの強い役は、誰が演っても100点ということにはならないよね。 田辺さんにとっては、大変苦しい戦いだったと思うんだけど、第2部の特に後半、速水の、マヤへの想いが、ていねいに描かれるようになってから、TVなりの速水の‘ひたむきさ’みたいなものを、田辺さんが照れずに演じてくれていて、私としては、好感が持てました。
 夢:うんうん。
 翔:安達祐実ちゃんにつられて、表情も少しずつ豊かになって来たし・・・ 彼にとって、とても大事な役になったんじゃないでしょうかね。
  ただ、彼の本来の持ち味というのは、『サイコメトラーE I J I 』の時の役(沢木晃)の方かもしれないって気もするけど・・・
 夢:うわ-、懐かしいねぇ。
 翔:彼は、豊川悦司系なんだよね、きっと。
 夢:あ、なるほど。
 翔:ただひとつ、セリフが聞き取りにくい、という致命的な欠点があるので、今後のためにも、ぜひ直して欲しいと思いますが。
 夢:それにしても、最終回、マヤと速水はどうなってしまうんでしょうね。
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第12話 (最終回)
 夢:は~っ、終わっちゃいましたねぇ。 なんか、11話の盛り上がりと比べると、淡々と話が進んじゃった気がするけど。
 翔:でも『忘れられた荒野』は面白かったよ。やっぱり「あだち・・・」
 夢:「安達祐実、恐るべし!」って?(笑)
 翔:はい。(笑)
 夢:でも、ここまで話が進んでしまうと、もう 第3部はないんじゃないか、って気もしたんだけど・・・
 翔:『紅天女』を、北島マヤ姫川亜弓のどちらが演じるのか、という部分は、第3部まで行かなければ結論は出ないわけだけど、肝心の速水とマヤの関係が、かなり進展してしまったからね。 
  速水は マヤに「好きだ」と告白したし、マヤは 速水が「紫のバラの人」だということに気づき、それまでの戸惑いが、一気に恋心に変わったし、おまけに、速水のお義父さんまで、速水の想いを 認めてしまうし・・・・
 夢:もう、二人の間に、障害は何もないものね・・・
 翔:私、実は お義父さんに望みをかけてたんだけど、あんなふうに、「おまえの好きなように生きろ」なんて、速水を喜ばせるようなこと言うなんて・・・ 「第3部はある!」なんて 力強く宣言した自信が、音を立てて崩れて行く って感じ。 あとは、紫織さまの「いつまでも待っています」の一言にすがるしか・・・
 夢:ううう・・・大嫌いな紫織さまに、「頑張れ!」って言うしかないなんて・・・
★    ★    ★
 夢:速水が、第2部のラストで、マヤから預かった青いスカーフを見ながら、「君が『紅天女』を演る時まで、待っているよ」って言うよね。
 翔:うん。
 夢:現在進行中の原作は、マヤチームと亜弓チームが、『紅天女』の試演を終えたところだそうだけど、原作が、本公演までこぎつけたら、TVの第3部も、解禁!って気がするけど。
 翔:うーん、でも私は、もし第3部をやるのなら、原作が全部終わってからにして欲しい。
 夢:そんなの待ってたら、いつになるかわかんないよ。
 翔:いや、一応、単行本50巻が目安らしいから。 美内すずえさんも、20世紀の終わりと共に終わらせようか、と言ってたし。 1年半~2年ぐらいで、まとまって行くような気がするけど。
 夢:2年かぁ、長いなぁ。
 翔:その間、出演者の皆さんには、精進して頂いて・・・・
 夢:そう言えば、安達祐実ちゃんは、舞台に立つんだってね。
 翔:そろそろ舞台をやってみたかった、って言ってたそうだけど、『ガラスの仮面』の影響も多少あったんじゃないかな。 小橋賢児くん、野際陽子さん、六平直政さんたちは、7月開始のドラマに出てるし、皆さん、なかなか頑張っていらっしゃる。
 夢:あ、田辺誠一さんは?
 翔:詳しくは知らないけど、何本かの映画に出演するそうです。
 夢:ふ~ん、どんな映画なのかなぁ、ちょっと観てみたい気がする。
 翔:『甘い結婚』の時は、速水系の役だったけど、『サイコメトラーE I J I』も、今やってる携帯のCMも、それぞれ、イメージが全然違うから、どれが本当の彼なのか、興味がある。
 夢:CM、あたし、最初、田辺さんだってわからなかった。(笑)
 翔:私も。(笑) ・・・田辺さんも、祐実ちゃんも、私たちをどんどん裏切って欲しい、いい意味で、ね。 そしてまた、いつか、『ガラスの仮面』に帰ってきて欲しいと思います。
★      ★       ★       ★       ★
 夢:―――ハイ、翔、本当に長いこと、ありがとうございました。
 翔:いえいえ、こちらこそ、とても楽しかったです。
 夢:行き当たりばったりの企画だったのに、よく最後まで続きましたよね・・ って、言いだしっぺのあたしが言っちゃいけないけど。(笑)
 翔:・・・あのう、私、どうしても番外編で取り上げて欲しい事があるんだけど・・・
 夢:あ、今回、『ガラスの仮面』のオープニングとエンディングの曲を作った≪B’Z≫の事ね。
 翔:うんうん。 ビデオを見たり、雑誌で彼らのインタビューを読んだりするうちに、≪B’Z≫の生きざまそのものに、興味を持ち始めた。 
夢:うん。
翔:彼らの、「どんな事をしても、俺たちは1等賞になりたいんだ!」っていう想いって、すごく理解出来るんだよね。 追われる者の辛さは、トップにいる者でなければ分からない。 いつ転げ落ちてしまうのか、という恐怖も、頂点に立った者しか 理解出来ない。 そういう 危うげな所に立って、なおかつ 走り続けようとする≪B’Z≫が、これから どうなっていくのか、すごく楽しみなんです。
 夢:あたし、そんなふうに彼らを見た事、なかったな。
 翔:『ガラスの仮面』にもいたでしょ、そういう人が・・・
 夢:え?
 翔:姫川亜弓
 夢:あっ!
 翔:だから、私は、北島マヤより、彼女の方が好きなんだよね。
 夢:なるほど・・・・
 翔:今回、つくづく思ったのは、TVドラマ『ガラスの仮面』が、私に、いろいろな扉を開いてくれた、ということ。
  特に、≪B’Z≫と出会った事は、長いこと忘れていた「音楽」と「アーティスト」への興味を、呼び覚まされるきっかけとなったし、田辺・小橋・安達・・・といった俳優さんたちへの興味が、他のドラマや映画への「案内役」になっている気がします。
 夢:この時期に、こういう対談が出来た、って事は、今が、翔再動の「旬」だった、って事なんじゃないのかな。
 翔:しゅん、ね。(笑) ・・・・とにかく、こうして動いた事で、手紙や電話を頂いたりして、旧交を深める事が出来たっていうことも、とても嬉しい事でした。 連絡下さった方々に、感謝を込めて・・・
 夢:ありがとうございました!

 P.S.―――――――――――
 翔:田辺誠一さんが出る映画のうちの1本は、7月11日公開の『ブルース・ハープ』で、彼は、「ホモのヤクザ役で新境地」だそうです。
 夢:うわ~っ、見てみたいっ。
 翔:でも、それって、もしかして『ガラかめ』と同時進行で撮ってたの?
   (間)
 翔:俳優って・・
 夢:凄いよねぇ・・・・・